日本に適する硬質、中間質小麦の開発【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第214回2022年9月15日
前回述べたように、香川県は2000年に見栄えがASW小麦に負けない「さぬきの夢2000」を開発した。しかも雨の被害もうけず、収量も安定している。そこでそれが急速に県内に普及し、最近ではさらに新しい優良な品種が開発されたと聞く。こうしたなかで讃岐うどんはまさしく讃岐の小麦=うとん粉を使った本来の讃岐うどんに戻っている。
一方、北海道では、 06年に北海道立農業試験場により新品種「きたほなみ」が開発された。これは私が仙台に帰ってきてから聞いたのだが、粉の色や製粉性が改良され、うどんの加工適性がASWに負けない品質であり、収穫期の雨にも強く、収量は「ホクシン」より2割も多いということから、急速に普及したという。
また、東北でも「ネバリゴシ」、「あおばの恋」などの麺用小麦が開発された。
パン用の硬質、中間質小麦はどうか。
私が網走にいるころの01年に「春よ恋」(いい名前である)、03年に「キタノカオリ」という栽培しやすく収量も期待できるパン用の品種が道立農試で新しく開発された。
東北では02年に製パン、中華麺や餃子の皮用の「ゆきちから」が開発された(これは仙台に帰ってきてから聞いたのだが)。
その他、全国各地で新品種の開発が進められてきた。とくに99年からの国内産麦新技術等研究開発、そのなかの麦品種緊急開発プロジェクト(農水省)はこうした動きを容易にした。こうしたなかで、今述べたような成果が生まれたのである。
日本の農学者もすごいものだ。研究条件さえ整備されれば短期間でこれだけの成果がおさめられるのだ(こういうのを「自画自賛」というのだろうか、私を農学者の一員だと認めてもらえればだが)。
06年、仙台に帰ってきたが、生協ストアで小麦粉の買い物をするとほとんどが外国産だった。国産の薄力粉が若干あるだけだった。また生のうどんを包んでいるビニール袋には国産も何も書いていなかった(ということは外国産小麦を原料にしていることを示す)。
そのころからうどんの原産地を注意してみるようになり、国産小麦を原料としたうどんを購入するようにとくに気をつけるようになったのだが、最近国産が増えている。そのさいの小麦は北海道産がほとんどなのだが、いずれにせよ喜ばしいことである。
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