【JCA週報】アイデンティティへのモヤモヤ感(藤井晶啓)2022年9月19日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、現在の協同組合機関紙「にじ」の最新号である2022年秋号に掲載したされた「アイデンティティへのモヤモヤ感」です。
アイデンティティへのモヤモヤ感(2022)
日本協同組合連携機構 藤井晶啓常務理事
藤井晶啓 常務理事
JCAで総務担当でしたが7月から基礎研究部担当となりました。これまで同様、一生懸命務めてまいりますので、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
恥ずかしながら「協同組合のアイデンティティ」がよく分かりません。辞書で引くと「自己同一性。ある人や組織がもっている、他者から区別される独自の性質や特徴」とあります。だから、いつも「アイデンティティとは自分は何者か、ということ。みなさんは協同組合をどう説明していますか。」と、問いに問いで返していました。
本誌はおかげさまで70年の歴史を持ち、各号には多くの方の言葉が詰まっています。第365号(1984年2月)で一楽照雄理事長(当時)は協同組合の目的を議論する難しさについて以下のように述べています。
「協同組合の目的とかは、一言で言えるような何か固まったものがあって、それを宝探しでもするように探そうとしても、なかなか見つかりにくい。それよりも、弱者のためとか、自立互助とか、協同組合を特徴づけることを探した方が実際的じゃないか。協同組合はどういう特色があるか、特色をもったものになりうるか、必要性と可能性を考える方がよい。具体的に今日の社会において、どういう課題に取り組むべきで、そしてそれを解決する方法は何か。そういうことを考えた方が実際的ではないかと思うのです」
また、第448号(1991年1月)で山口巌理事長(当時)も語っています。
「現在の協同組合運動の危機は、組合員が共通の敵(目的)を発見できなくなったことに、基本的な原因がある。戦前の産業組合の時代の、組合員共通の敵は商業資本であり、しかもその敵は、村内の米麦肥料商や高利貸しのように具体的に目に見えた。戦後の組合の共通の敵は、産業資本や金融資本であり、協同組合運動は、まさに資本主義社会における弱者が横に連携して、協同の力により自らを守る防衛組織として発達してきた。残念ながら、今の組合員には一部の例外を除いて組合結成の前提となる大衆運動がない。組織も肥大化して、資本主義社会の市場主義、競争原理の中に埋没し、組合が誰と闘っているかを忘れがちである」
私たちはアイデンティティ議論と言われると、ついつい「協同組合とは」を抽象的に捉えがちです。しかし、捉えたいのは「なぜ協同するのか」という協同組合の目的を自分たちが忘れがち、という現実。だからこそ、まわりくどくても地道に自らを振り返る積み重ねこそが、効率性だけでは測れない「協同組合らしさ」ではないでしょうか。
「にじ」は全文をJCAのウェブサイトにて掲載しておりますので、ご覧ください。
https://www.japan.coop/wp/publication/11789
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