機能性を持った冷凍米飯加工品の可能性【熊野孝文・米マーケット情報】2022年9月21日
コロナ禍下で需要が増えた分野の一つに冷凍食品がある。冷凍食品協会の取りまとめによると、2021年(1月~12月)の生産量は159万6,213tで、前年に比べ2・9%増加している。金額ベースでは7371億円にもなっている。冷凍米飯加工品も増えており、よく知られているのがチャーハン、ピラフ、おにぎり等でこれらの生産量は19万5,718tにもなっている。この分野に10月から新たな冷凍米飯加工品がスーパー店頭に並ぶ。それは“機能性”を持った冷凍米飯加工品。
冷凍食品の生産量がどうなっているのか、冷凍食品協会が詳細なデータを公表しているのでまずそれについて触れたい。総生産量については冒頭に記したとおりだが、用途別では業務用が79万7,547t、家庭用が79万8,667tで、ちょうど半々の生産量になっている。もともとは業務用向けが多かったが、コロナ禍で家庭用向けが増加、初めて数量、金額ベースでも2021年に業務用向けを上回った。
米飯類で生産量が多いのがチャーハン10万0,667t、ピラフ5万0,985t、おにぎり2万7,057t、その他1万7,039tとなっている。チャーハン、ピラフ類は大手冷凍食品メーカーが新商品開発競争を繰り広げ、チャーハン戦争といわれるほど話題になったが、最近のトレンドでは「高級冷凍食品」になっている。実際に高級冷凍食品を販売している銀座の百貨店に行ってみたところ1食2000円もする中華料理が販売されていた。それ以外にこんなものまで冷凍食品として販売しているのかと思えるほど多様な食品が冷凍ショーケースに並んでおり、今月初めには大手量販店が1500品目もの冷凍食品を販売する専門店舗を新浦安にオープンした。
こうした冷凍食品の広がりもあって、米飯類もこれまでよく並んでいた商品ではなく、多様な食品の開発競争が始まっている。それを後押ししているのが新たに開発された冷凍食品製造技術である。米飯を例にすると解凍時に白飯本来のおいしさを炊き立てのように味わうことは難しい。ところが空冷ではなく液冷で食品を凍らすという製造装置も開発され、冷凍時間が格段に速くなり、これであれば白飯本来のおいしさを再現できるのではないかと期待されている。また、白飯をコーティングしなくても解凍時にダマにならない製造方法もあり、こうした製造技術の進歩によりコメを原料にした冷凍加工食品の商品アイテムが増加、すそ野を広げていくことになりそうだ。
機能性を有した米飯加工食品は、身体に良い機能性成分を加え、かつ糖質オフというもので、体に良く太らないというのがキーワードになっている。さらには骨密度を維持するために必要なマグネシュウム、カルシウム、鉄を吸収しやすくする成分を米飯類に転嫁するという商品開発も進められている。こうした機能性を持たせた米飯類を家庭で作るには難易度が高いが、冷凍米飯であれば大量生産が可能になる。
冷凍米飯が優れている点はそれだけではなく、加工が自由自在でアミューズメント施設では、その施設のキャラクターを象ったご飯のプレートに挟んで食べるライスバーガーが人気になっており、SNSで拡散している。また、チャレンジ精神旺盛な量販店の中には「ジャンボシャリ玉」を冷凍食品売り場で売り出したところもある。シャリ玉といえばすしに使用されるが、ジャンボシャリ玉は弁当に使用されるものでご飯を炊く手間が省ける。さらにはそんなご飯の食べ方もあるのかという年配者にはついていけない食べ方もあり、こうした商品も次々に投入されている。商品開発担当者は「何が当たるかわからない」というものの、当たる商品の開発には相手先との綿密なやり取りが欠かせず、中には開発プランができてから商品になるまで2年もかかった商品もある。
冷凍米飯のメリットは何よりも保存が効くという点で、日配品と違い納入頻度が1か月に一回という頻度で済む。ただし、その分マイナス18℃で保管しなくてはならず、電気料金の高騰が頭痛のタネになっている。それを差し引いても簡便性と美味しさ、機能性を求める消費者のニーズは強まることこそあれ、下火になることはないと予測される。
冷凍米飯加工品が売れ筋の上位になっている店舗に行ってみると韓国風のりまきと赤米を使ったおにぎりなどが販売されていた。実際にそれらを購入して試食してみたが、海苔巻きの海苔がべたついた感じがせず、完成度が高い商品といえる。解凍時に炊きたてのご飯に近い商品が市場に投入される日も近いだろう。
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