コシヒカリと同値になったBランク米【熊野孝文・米マーケット情報】2022年9月27日
先週木曜日に都内で開催された米穀業界の全国団体の情報交換会で千葉県の米穀業者が「千葉県は9割がた集荷が終わったが、いつの間にかふさおとめやふさこがねといったBランク米がなくなってしまった。長年、集荷しているがこれほど早くBランク米がなくなるのは珍しい。どこに行ったのかわからないが不思議な感じだ」と言っていた。同じような話は千葉県内の複数の米穀業者から寄せられており、実際、市中相場もBランク米とコシヒカリが同値圏内になってしまったのだからこうした玉がタイト化し始めた現象であるとみることができる。
Bランク米という表現は抽象的な概念でコメ業界ではよく使われるが、何をもってBランク米を指すのかという定義は明確ではない。概念としてはコシヒカリやあきたこまちといった全国銘柄に対してその県で生産される独自の銘柄をBランク米と言ったりもする。地元の県が鳴り物入りでブランド化すべきオリジナル品種を世に送り出しても、市場で取引されるときはBランク米としての評価しか得られない場合もある。何せ検査して銘柄を精米で表示できる品種だけでも800品種を超えるのだから、取引会でそうした品種を売りに出しても買い手からは「何それ?」と聞き返されるだけである。
各産地の銘柄米を取引する際にそれぞれの産地銘柄の市場評価は極めて重要な要素であるには違いなく、同じ県で生産される同銘柄であっても地区によって市場価格が違っていた。
あえて過去形にしたのは、現在ではそうした市場評価が得られにくくなっているからである。そうした現象が起きた背景には、消費者が次々に出る新品種の違いを認識できなくなったことが大きい。
話を本題のBランク米のタイト化現象に絞ると、こうした現象が起きる原因ははっきりしている。それは飼料用米の増産で、そちらに回されるBランク米が増加、その分供給量が減っているからである。4年産では主食用米からの用途変更で最も多いのが飼料用米ですべての県が昨年よりも増えた。すでに飼料用米の生産量は60万tを超えており、4年産は70万tに達する勢いだ。
こうしたBランク米がタイト化して最も困る業界は、中食・外食といったいわゆる業務用分野で、コメだけは安く買えると思っていたのだがそうではなくなってきている。こうした分野に長期スパンで納入している業者の中には値上げを受け入れてもらったところもある。
ただし、すべての納入業者がそうなるとは限らない。なぜなら業務用用途では新米にこだわらないところが多く。そうしたところには2年産、3年産を提示できる。
在庫になっている古米といえば周年安定供給対策で保管されているコメがあり、これらは国が保管料を助成しているため来年までゆっくり販売していても経費が掛からない。しかも具体的な仕入れ価格はオープンにされていないが1説には1俵8000円台だと言われている。
国はこれまで「需給調整のための出口対策はやらない」とさんざん言ってきたが、周年安定供給対策を出口対策といわずして何をもって出口対策というのか不思議でならない。
こうした出口対策に取り組めるところとそれができない中小卸業者とは競争上大きな不公平等を課していることになる。
自由で公平な先物市場があれば大手でも中小でも平等な取引条件で仕入れが可能であったが、すでにそうした先物市場はない。先物市場を廃止に追い込んだ勢力は、こうした税金を投入した政策を維持するために画策したとしか思えない。
しかし税金が無尽蔵にあるわけではない。すでにコメの入り口対策や出口対策につぎ込んでいる税金は1兆円を超している。過去食管時代に過剰米対策で3兆円をつぎ込んで財務省自ら「3大馬鹿査定」と言っていたが、同じようなことがまた起きている。
さすがにこうしたコメ政策の在り方に我慢ならなくなったのか、財務省も飼料用米について専用品種でなければ助成しないと言い始めている。これは当たり前のことで少なくても転作というからには主食用米と同じ品種を作る必要はなく、収量性のある飼料用米専用品種を作付けすべきで、これであれば収量性加算を得られ、かつ飼料用米から主食用米への横流れ防止策にもなる。
しかし、そうした措置が取られた場合の生産現場の負担を考えると益々生産現場を疲弊させる結果を招くと懸念してしまう。
すべての元凶は市場に向き合ったコメ政策を遂行しないことにあり、これを無視していかに巨額の税金を投入して入り口対策や出口対策を行ってもコメ業界は再生しないどころか死に体になる一方である。
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