【JCA週報】ウクライナの協同組合、戦争と国際協同組合運動(天野晴元)2022年10月3日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、現在の協同組合機関紙「にじ」の最新号である2022年秋号に寄稿いただいた「ウクライナの協同組合、戦争と国際協同組合運動」です。
ウクライナの協同組合、戦争と国際協同組合運動
日本生協連国際部
天野晴元氏
はじめに
ウクライナの消費者協同組合の紹介と、国際協同組合同盟(ICA)や各国の協同組合のロシアのウクライナ侵略に対する対応について報告する。ただし、私自身はウクライナの協同組合を現地調査した経験がないため、同国の協同組合の概況については、主に、ウクライナを代表するICA の会員団体である全ウクライナ消費者協同組合中央連合会(UKRKOOPSPILKA)の公式サイトの内容をもとに紹介する。
(略)
4.ICA や各国協同組合の対応
(2)ICA総会とICAの立場
終わりに、6月20日にスペインのセビリアで開催されたICA総会について紹介しておきたい。ICAのグアルコ会長は活動報告のなかで、総会代議員の多くが関心をもっていたウクライナ問題については時間を割かず、UKRKOOPSPILKAのイリア・ゴロフスキー会長のスピーチにその時間を譲った。今回の総会は半日で正副会長と理事の選挙も行う過密なスケジュールだったことから、議論が白熱する問題への言及を避けたかったのかもしれない。なお、総会前の3月には、ポーランドの全国協同組合評議会がICA理事会に対して、ロシアとベラルーシのICAからの除名を求める書簡を送っているが、ICA理事会は会員除名の請求に同意しなかった。ICAとしては、ウクライナ問題について、伝統的に守ってきた政治的中立性を維持する選択をしたと理解される。
UKRKOOPSPILKA イリア・ゴロフスキー会長のスピーチの要旨は以下のとおり。
「2022年2月24日、ウクライナの人々は誰もが持つ未来への夢を奪われた。ロシア指導部は人々から自由を奪おうとしている。さまざまなところで空爆が起きている。1,000万人のウクライナ人が避難民となっている。戦争の恐怖は大きいが、いま私たちがこれに対応しなければ、未来の人々が許してくれないだろう。
この戦争において、ウクライナ人は自由、独立を選んだ。ウクライナ人には誇りがある。自分の土地、家、平和裡に住む権利を守りたい。ロシアの指導部は世界を昔の世界に戻そうとしている。ウクライナの戦争は地域的な戦争ではない。非常に深刻な影響を国際的に与えるだろう。戦争で、ウクライナの町や教会、インフラの30%が破壊された。教会や修道院も破壊されている。ウクライナ経済への損失は6,000億ドル以上と言われている。ウクライナの11の地方で多くの破壊行為が繰り広げられ、協同組合の店舗も破壊された。協同組合がこの戦争の犠牲になり、数百の協同組合が財産を失った。数千人の人々が失業し、家や財産を失った。何十年もかけてつくった協同組合が、数分の間に破壊された。戦争がまだ終わらないなかで、被害規模の推計は難しいが、協同組合は8,000万ドル規模の損害を受けたとみられる。このような厳しい状況のなかでも協同組合は仕事を続けており、組合員や消費者に必要なサービスやモノを提供している。
戦争はいずれ終わり、ウクライナの協同組合は復活するだろう。今よりもより強力なものとして、国の経済に貢献していくだろう。しかし、それは明日のことだ。今日私たちは、民主主義か権威主義か、自由か奴隷となるかを選ばなければならない。今も戦いは続いている。世界の人がウクライナを支援してくださることを願っている。ウクライナは世界の助けを必要としている。」
報告するゴロフスキー会長と破壊された店舗
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