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玉薄から4年産米の高値が通る展開に【熊野孝文・米マーケット情報】2022年10月4日

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先週開催されたクリスタルライスのFAX取引会は、新米の出盛り期であったものの売り物総数は4万7,084俵で前年同期に比べ45%と半分に満たない数量であった。関東玉の売りものが薄くなったのに加え、主力の秋田あきたこまちも売り物が少なく、買いを満たすまでの玉がなく、売り唱え価格が通る展開になった。売り物の加重平均価格も1万2,458円と前年同期に比べ17%高で、玉薄から高値が通りやすいという状況になっている。

主要産地の売り唱え価格表は、先週開催されたクリスタルライスのFAX取引会で主要産地銘柄の売り唱え価格で、前年の同時期に比べるといずれの銘柄も値上がりしている。前回の取引会では、関東の早期米が上がっていたが、上げ幅は小幅だった。今回は北海道、東北の主力銘柄はいずれも大幅高で前年同期比較では1000円以上高い。

売り唱え価格が高いことに加え、売り数量が前年同期の半分の数量にとどまったという少なさも異例ともいえる。

各産地銘柄の売り唱え価格は、青森まっしぐら1万1,300円~1万1,500円(1等東京着税別以下同)、宮城ひとめぼれ1万2,300円、福島中通りコシヒカリ1万1,900円、茨城コシヒカリ1万1,400円~1万1,600円、茨城あきたこまち1万1,100円~1万1,200円、茨城ミルキークイーン1万1,900円、栃木コシヒカリ1万1,400円~1万1,700円、栃木とちぎの星1万0,200円、栃木あさひの夢1万0,900円、埼玉コシヒカリ1万0,900円~1万1,100円、千葉コシヒカリ1万1,650円~1万1,900円、千葉ふさこがね1万0,700円~1万1,200円、新潟魚沼コシヒカリ1万9,900円、新潟一般コシヒカリ1万5,100円~1万5,300円、新潟新之助1万7,500円、富山コシヒカリ1万3,900円、石川コシヒカリ1万3,100円、滋賀コシヒカリ1万2,500円、千葉ヒメノモチ1万2、300円~1万2,400円。これ以外に各産地の3年産米の売り物も出ている。

市場関係者はこの状況について①東北玉の売り物が少ないのは収穫期の降雨で10日程度刈り取りが遅れている②東北玉はBランク米が極端に少ない③関東玉はシラタ(成熟しきっていない米)が多く品位落ちなどとしている。刈り遅れは回復するにしてもBランク米の売り物が少ないのは、関東玉も同じだが、福島県のBランク米はほとんど出てこなかった。この原因は、福島県は政府備蓄米の落札を優先し、そちらに向けられたことや集荷体制として主食用米以外の飼料用米等のコメの数量を確保することが先決で、結果的に主食用米が後回しにされたことにある。また、青森のまっしぐらの売り物も少なく、かつ高唱えになっており、これまで関東玉の相場水準を見ていた買い手にとっては割高感が強かった。

売り唱えが高かったので買いが入らなかったかというとそうでもない。秋田あきたこまちは売り唱え価格で買いが入り売り、玉が拾われてしまった。秋田あきたこまちは全国銘柄で、卸としては量販店向けの欠くことのできない必須アイテムとあって玉確保に動いた。また、同じ全国銘柄の新潟コシヒカリの唱え価格に比べ約3000円安いことも買い手にとっては買い易い価格に映ったともいえる。逆に割高感がある新潟コシヒカリには買いが入らず、成約しなかった。また、売り物が薄かったBランク米についても割高な玉は買い見送られており、需給がタイト化するので買いが入るという状況までには至っていない。

ただ、市場関係者は「ここまで上がるとは想定していなかった」と言っており、スーパーなど量販店の売り場に置かれている新米の安値価格を見るとまさに高値を追って買える状況ではないはずなのだが、実際には玉確保が優先された格好。もう一つ気がかりなのは、3年産米も一斉に売り唱え価格が1俵500円高くなったことで、古米だから安く買えるという状況ではなくなったこと。売り玉の中には3年産の北海道ゆめぴりかや秋田あきたこまちも出ているが、4年産との新古格差は500円程度しかない。

新米の高値に追随して古米まで高値になると、卸にとっては量販店のみならず、中食・外食との値入れ交渉をどうするのかと大問題が発生する。卸の中には新米の切り替え時期を1か月先延ばして、その段階で納入価格を上げるというところもあるが、すでに先行している卸が安値で新米を納入していることから見れば値上げ交渉が難航するのは避けられない。産地高の消費地安が一層進んだことにより、益々収益を圧迫するという構造が生まれている。

これまで量販店での精米価格を引き下げて来なかった理由は「単価の張るコメは売り上げを確保すべきで、特売は量販店側のメリットにならない」ということが公然と言われてきたが、消費者の懐が厳しくなっている現在、そうした理屈が通る状況ではなくなっているのも事実である。

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