世界の親露派人口【森島 賢・正義派の農政論】2022年10月17日
ウクライナ紛争はドロ沼に入り、膠着状態を続けている。
このウクライナ紛争を、ウクライナとロシアの戦争とみている人は、ほとんどいない。米国を盟主にした米欧のNATOと、第二の核大国であるロシアとの間の紛争である。
また、紛争であって戦争ではない、といっている。戦争といってしまうと、核地獄へ近づくからである。
この危ない紛争は、一刻も早く終わらせねばならない。
一方の米欧側の要求は、NATOの東漸である。ウクライナのロシア国境の近くに、NATOのミサイルを配備したい、と考えている。このために、ウクライナに武器を与え、訓練し、軍事情報を与え、戦略と戦術を与えて、ウクライナを最前線の尖兵にしている。
他方のロシアの要求は、NATOの東漸の中止である。そのためのウクライナの非核武装中立化である。このために、中国やインドを味方にしたい、と考えている。両国ともNATOの東漸に不賛成の親露派である。だが、いまは中立にとどまっている。
上の2つの図を説明しよう。
このうち上の図は、国連が先週12日の総会で行った、ロシアによるウクライナ4州の併合は無効、とする決議案の投票結果である。ほとんど全ての報道は、賛成が143か国、反対が5か国という圧倒的多数で採択された、と報じている。
下の図は、賛成した国の人口と、不賛成つまり反対か棄権か欠席した国の人口を比較したものである。
以下では、この図について考える。
◇
この図をみると、賛成の嫌露派が圧倒的だったとはいえない。その逆で、不賛成の国の人口が全世界の人口に占める割合は52%で、賛成の国の46%よりも多い。つまり、親露派の方が多い。これが投票結果である。
国連総会の採決方法は、一国一票の大原則である。だから、ツバルは人口が1.1万人だが1票、中国は人口が14億人を超えているが、ツバルと同じ1票である。
この大原則は、第2次大戦後に、それまで欧州などの植民地になり、虐げられた国々が独立したのだが、それらの国々の権利を尊重しよう、という崇高な考えのもとで決められたものである。
◇
だが、その一方で、地球上にいる全ての人は、同じ権利を持っている、という考えがある。つまり、地球上に生きる人々の、一人ひとりの権利は平等だ、という考えである。
下の図は、この考えに基づいて描いたものである。
この図をみると、ロシア非難決議は圧倒的な多数で採択された、とは言えないことが分かる。それどころか、多くの報道とは逆の結果で、不賛成派の方が多い。親露派の方が多い、といってもいいだろう。
これは、なにを意味するか。
◇
ロシア非難決議に賛成した嫌露派の国々の筆頭は米国で、その人口は、全世界の人口の僅か4%である。不賛成の親露派の国々の筆頭は中国で、米国の4.5倍の18%である。
このことは、米一国支配期の終焉が近いことを物語っている。そして、中米対立期という新しい画期に入ったことを意味している。
もしも、中米の対立が紛争になり、戦争になれば、日本は最前線になる。
いったい、日本はどうするのか。
中国側に立って、アジアの名誉ある一員になるのか。それとも、米国側の最前線に立って、その哀れな尖兵になり下がるのか。あるいは、政経分離の建前を貫き、両国の調停に立てるのか。
それが厳しく問われることになるだろう。
(2022.10.17)
(前回 農基法の基本問題)
(前々回 祭りのあとで)
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