純農村地域で驚愕の実績をあげるスーパーに学ぼう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年10月18日
エリアのシェア推計では6割の驚異的店舗
A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次
ビジネスの成功には、それなりの条件が必要である、とあれこれ課題解決のために知恵を集め、苦労を重ねるが、必ず結果につながるわけではない。しかし、稀に、条件に恵まれないのに結果を出している経営が存在します。
2019年度の売上高は対前年度比8.1%増、同20年度8.9%増、同21年度12.8%増、新型コロナの影響もなんのその、3年続けて増収増益を続けているスーパーマーケットがあります。
それも、この店舗が立地している地域は、自然豊かな純農村地帯。私も、3年ほど前に一度、今年、2回利用させてもらいました。何とか、このスーパーマーケットの成長の秘密を探ろうという魂胆も抱えて。
山梨県の北西部、八ヶ岳の南麓に広がるなだらかな農業地帯、北杜市大泉町。この店は「ひまわり市場」、この地に40年、経営には苦労していて12年前に法人化。その後、新店長によって経営がメキメキ成長軌道に。
この店長のアイデアと努力が功を奏します。ユニークな商品政策、集客イベント、店長のパフォーマンスなどで、徐々に知られるようになり、全国ネットのテレビ番組などで紹介され、首都圏からわざわざ利用する"常連客"が生まれ、地元の利用者の増加とともに、実績を伸ばしてきたのです。
最初に訪ねたとき、正直、目を疑いました。とにかく、JRの駅から車で14,5分、高速道路のインターチェンジからも同じくらいで、正真正銘の農村地帯。店舗の大きさは、標準的なコンビニの店舗3つ分くらいの大きさです。近くには、地元のJAの廃止となった支所や施設がある地域です。
店舗の名前は「ひまわり市場」。従業員26名、資本金800万円のローカルスーパー。売場面積は約570平方mなので200坪に満たない。それでいて、2021年度の売上げは9億7千万円、従業員1人当たりの売上高は2,700万円。奇跡のような店です。
スタッフを信頼し、任せ、取引先もスクラムの"ワンチーム経営"
この地域(大泉町)の人口は5,500人、世帯数は2,650世帯です。地域の人の利用度を推計すれば、1人当たり年間食品消費額28万円として、年間売上高を割れば、何と63%という異常に高いシェア。八ヶ岳の麓には別荘地帯があり、その住人や観光客も利用されると考えられますが。
この地域で、都市部のスーパーマーケットと肩を並べる実績をあげている理由は何か。何度か訪問し、店のスタッフの話を聞き、ビジネス誌などの紹介記事を読むと、いくつかの特徴が見えてきます。
何といっても、長年の労苦の時期を超えて、競合する店舗が存在しないことで、思い切った経営策が採れることが大きいと思います。とはいえ、長年コンサルをしてきて、信じられないことばかりで、書きたいことはたくさんありますが、そのなかで、紹介したいポイントは2つ。一つは、強力な商品力の発揮、もう一つは、スタッフの重用と責任、この2つが一体となり、店全体がワンチームで動いている、という印象です。この2つは、JAにはあまり見られないことです。
この店には、"10人の店長"がいるようなものです。200坪にも満たない店舗で、青果、乳製品、和風食材、加工品、調味料、海産物、肉、米・パン、和洋菓子、酒・飲料の各売場に責任者のスタッフがいます。店長から任されている彼らは、特徴ある商品を探し、独自の方法で仕入れ、個性的な「一番商品」を次々育てています。店舗は、ほぼ毎日のようにイベントがありますが、集客のためのチラシやPRは一切行っていません。
一番商品とは、他にない価値ある差別化商品であって、顧客に大人気、売上げ・利益貢献度が一番といった商品のことです。スタッフのバイヤーとしての責任は重いのですが、それを任したトップが素晴らしい。しかも、社長によると、その商品価格は製造業者の意向を実現させている、というのです。製造者はローカルな業者であるだけに、モノづくりのマインドをしっかりつかんで育てています。青果でも地元の農家が生産する有機野菜が産直コーナーの主役で、良い関係を育てています。
ちなみに、全国のスーパーマーケットの労働分配率は、平均で43%程度であり、目標は45%という業界で、このひまわり市場は60%とあります。スタッフに任せ、実績に応じて、業界の常識的な数値を超えた分配を行う。農村地域だからこそ、意欲の高いスタッフを集めることの難しさへの経営者の対応でしょうか。しっかりスタッフ、人を育てています。
最後に、同店の経営理念である「3つのお約束」の3番目に、「人を大切にします。お客様はもちろんスタッフ、そしてお取引先様全てが満足を得ることに邁進します」とあります。
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