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【JCA週報】ドン・キホーテとレイドロー報告(2010)(松岡公明)2022年11月14日

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「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「にじ」2010年春号に、当時の常務理事であった松岡公明氏が執筆された「ドン・キホーテとレイドロー報告」です。

ドン・キホーテとレイドロー報告(2010)
財団法人協同組合経営研究所 常務理事 松岡公明

セルバンテスの『ドン・キホーテ』は、古くは滑稽物語と見なされていたが、その後、ドン・キホーテが象徴する理想の追求とサンチョ・パンサが体現する現実への対応という相反する二面の葛藤と統合、すなわち理想と現実を生きる人間そのものの物語性を見い出すことによって評価が劇的に変わった、と言われる。

今年(2010年)は、協同組合運動にとって「レイドロー報告」30周年と「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」15周年の節目の年である。「報告」では、協同組合が直面、克服すべき危機について、歴史的に、「信頼」「経営」「思想」の3つの危機を指摘した。「思想の危機」を強調したのは、世界が大きく変貌していくなかで、協同組合の目的とは何か、進むべき道筋、方向はどこなのか、といった協同組合の本質について、協同組合人に問い質したかったからである。自問自答してもらいたいと考えたからである。

現在、協同組合では「3つの危機」が同時進行の状態にあり、そして、それらが負のスパイラルに陥っているのではないか。すなわち、組合員の高齢化、世代交代を迎えて組織基盤が弱体化、さらに競争激化のなかで経営が悪化、輸入食品問題による信頼の喪失、経営優先による組合員の「顧客化」と組合員離れ、組合員・役職員の教育・倫理の劣化、組織活動・事業への求心力、結集力の低下、さらなる経営の悪化という悪循環である。「思想」の劣化が「経営」の悪化へ、経営主義的な行動が「信頼」「信用」の低下へとつながっている。

協同組合は、ドン・キホーテの騎士道ならぬ「正気の島」として遍歴の旅を続けなければならない。また、理想と現実を生きていかなければならない。「報告」は30年前のものだが、少しも色槌せることはない。今日的にどう読むかという「読み方」「活かし方」によって、協同組合運動の評価と価値が大きく変わるだろう。30周年の今年、現在の危機的状況をパラダイム・シフトの好機と捉え、協同組合の「失われた30年」(?)を反省し、レイドローが協同組合人に投げかけた「協同組合のアイデンティティとは何であるのか」という、「警告」とも言える問い掛けに対して、ミッション、パッション、アクションの「三拍子」で回答していくための絶好の機会と捉えたい。

財団法人 協同組合経営研究所 協同組合経営研究誌「にじ」2010年春号 No.629より

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