(308)協同組合セミナー雑感【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年11月18日
先日、とある機会があり協同組合セミナー(JA全農主催、事務局(一社)農協流通研究所)の講師を務めてきました。何十年ぶりかで古巣の同期・後輩に再会したり、当日までの準備を通じて久しぶりに協同組合の源流を確認しなおしたり、多くの気づきを得られた時間でした。
そうか、40年近く昔の話になるのか...というのが偽らざる感想である。大学を卒業して古巣(JA全農)に入会し、筆者の社会人としての生活がスタートした。そういえば、最初の集合研修で、ロッジデールやライファーゼンの話を聞いたような記憶がある。だが、その後の社会人生活は日々に追われ、目の前の仕事に翻弄された毎日が続いた。そのような中でも折に触れて、組織の根幹に関わる議論に接する機会には遭遇した。当然のことながら、そこでは学問ではなく実践の場としての具体的対応がほとんどであった。
現在は大学教員という仕事柄、研修講師や講演などを依頼されることがある。ただし、それはあくまで自分の専門分野関連である。学問領域として確立している協同組合論・協同組合研究の世界との関わりは関連学会に参加していた程度に過ぎない。
さて、今回の依頼は古巣の若手職員プラス子会社・関連会社の若手に対して「協同組合論」を筆者の実践的な経験に基づき講じてほしいというものである。一瞬、どうしたものかと考えた。一方で、こういう話を若手にする年齢になったかという気持ちと、学問的な「協同組合論」とは少々違う切り口/まとめ方でエッセンスを伝えられたら面白いかもしれないという細やかな挑戦心が沸いてきた。
そこでいろいろ工夫を凝らした。「技術」と言えばテクノロジーのような印象が強いが、社会科学系の大学教員は意外とさまざまな「技」を習得している。自然科学系の「技術」は目につきやすいため「おお!」となることが多いが、社会科学系の「技術」はジワジワと効くものもあれば、最後の最後で「そういうことだったのか」という形で離れていた点と点をつなげさせるものなど、「技」の種類も多様である。今回はその中の1つを活用した。
その結果、休憩時間に事務局の女性から、通常「協同組合論」で当然のように使用される言葉が全然出てきませんねというコメントを頂戴した。意識的に避けていたからそのような反応が出てきたのであり、こちらとしては想定内である。だが、それはそれなりに、世の中の動きや人々の反応がどのように推移したかという説明の中で、協同組合の理念や組織の本質が何であるかを伝えたと考えている。しばらくして届くであろう主催者からのフィードバックは怖さと楽しみがミックスしている。
それにしても、講義を実施した部屋での参加者は事務局を含めて数名である。だが、後で聞いたところオンラインの向こう側には300~350名くらいの方々が聞いていてくれたそうだ。話をする立場からすれば、会場で参加者の反応を見ながら臨機応変に表現を微修正しつつ講義を行う方が遥かに楽しいし臨場感もある。それがコロナ以降はこうした状況が活用できる場面は激減した。職場でディスプレイを見ながら、延々と講師の話を聞くのは大変な難行であり、心から感謝と「お疲れ様」とお伝えしたい。それと同時に、私が伝えたかった本質を自分なりにつかみ取ってもらえればこれに勝るものはない。
* *
セミナーでは約40年という年齢差を余り意識せずに話をしました。しかし、1984年に就職した当時の自分に置き換えて見れば、40歳年上の講師は「戦前の人...」に等しい訳です。これはこれで帰宅してから少々悩んだことも付け加えておきたいと思います。
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