「国境なきパネットーネ」のクルージングイベント ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2022年11月19日
イタリアのクリスマスに欠かせないお菓子、パネットーネは15世紀にミラノで初めて作られたと言われています。
主にミラノを中心とする北イタリアで食べられていましたが、最近では大企業が全イタリアで販売しています
しかしパネットーネの本当の味は手作り。パティシエが腕によりをかけて作ったものが最高です。
壇上に並ぶパティシェたち
この手作りパネットーネを世界中の人に食べてもらおうと、APEI-『イタリア最高のパティシエ大使(非営利法人)』のイジニオ・マッサーリ会長とファウスト・モラヴィート理事長が「国境なきパネットーネ」と題したコンクールを7年前に始めました。
出品された手作りのパネットーネを審査し優勝者を決める催しで、イタリア各地で開催していましたが、昨年からイタリアのクルーズ船会社Costa Crocieraの協力を得て、1週間で地中海を周遊するクルーズ船上で決勝戦を開くことになりました。
クルーズ船の船内の様子
今年は10月23日から30日まで、北イタリアのサボーナ港を出港した旗艦船コスタ・トスカーナが、ローマの北80キロほどのチヴィタヴェッキャ、ナポリ、パルマ・デ・マイオルカ、ヴァレンシア、マルセーユ、サヴォーナと回りました。その間に船内の劇場で参加しているパティシエを紹介しながら船客にパネットーネだけでなく、ジェラートやマロングラッセ、ピッツァなど色々なものを味見してもらい、チョコレート入りのパネットーネの審査では投票にも参加してもらいました。
審査用のチョコレート入りパネットーネ
このイベントは単にパネットーネの普及でなく、トップクラスのパティシエによる手作りスイートの良さを知ってもらうためのものであり、フランス、スペインのトップ・パティシエも参加し、イタリア、フランス、スペインのパティシエ・サミットの感がありました。
筆者も参加したチョコレート入りパネットーネの審査
イタリア外人記者協会の『グルメグループ』のメンバーである私は、チョコレート入りパネットーネの審査に参加しました。
審査員はイタリア、フランス、スペインの3人のトップ・パティシエと、イタリア、ドイツ、日本のジャーナリストの6人です。
審査するパネットーネは20。外見、切り口、チョコレートの使い方、手触り、舌触り、香り、味の7項目に点をつけます。
初めに全体を見せ、次に半分に切ったものを、そして一切れずつ配られます。
この審査員とは別に、船客は一番おいしいパネットーネに投票します。
「国境なきパネットーネ」はクルージングのアトラクションとしても機能し、船客ならだれでも参加できて、著名なパティシエの話を聞いたり質問したりすることもできます。
優勝したジャンノッティ・パティシエ(中央)とマッサーリ会長(右)
最終日には参加した全パティシエにより『国境なきパネットーネ2022年』のトロフィーがアントニオ・ジャンノッティさんの手作りパネットーネに、チョコレート入りパネットーネへの賞はルイジ・フスコさんに渡されました。
マッサーリ会長は、イベントについて次のように語りました。
「APEIの会員は厳選された65人、メンバーになるためには試験があります。
パネットーネは北イタリアのクリスマスのお菓子です。それが1975年ころから年間を通して食べるようになりましたが、これは手作りのパネットーネ、企業はシーズン外には作りません。
パネットーネも変化します。伝統を守るということは保守的であるということではなく、根本的な味や形は変えないで新しいものを作り出さなければなりません。パティシエを目指す若者は革新的でなければなりません。そしてスイートに対してパッションだけではだめで、アモーレ(愛情)が必要です。なぜならパッションは一時的ですが愛情は長く続くからです。」
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