【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】ミニマム・アクセスなどの「最低輸入義務」の見直し(再論)2022年12月22日
赤字で倒産の危機に瀕する農家に、コメや乳製品の在庫が多いから、米価も乳価も上げられないし、酪農家には、北海道だけでも100億円規模の在庫処理負担金を負担させ、余っているんだから、コメつくるな、牛乳搾るな(生乳廃棄がすでに起こっている)、牛殺せ、と言う一方で、こういうときは他国なら輸入量を調整するのに、我が国は、コメの77万トン(うち36万トンは必ず米国から)、乳製品の13.7万トン(生乳換算)という莫大な輸入を「最低輸入義務」だと言い張って履行し続けている。
しかも、円安もあり、日本の国産より輸入のほうが相対的に高くなり、コメでは、米国産が国産の1.5倍にもなってきているのに、莫大な輸入を続け、国内農家には減産させているという不条理である。
1993年UR合意の「関税化」と併せて輸入量が消費量の3%に達していない国(カナダも米国もEUも乳製品)は、消費量の3%をミニマム・アクセスとして設定して、それを5%まで増やす約束をしたが、実際には、せいぜい1~2%程度しか輸入されていない。実際に、最新のデータで確認すると、表のとおり、カナダは5%を超えているが、米国は2%、EUは1%程度で、筆者の指摘のとおりである。
ミニマム・アクセスは日本が言うような「最低輸入義務」でなく、「輸入数量制限」を全て「関税」に置き換えた際、禁止的高関税で輸入がゼロにならないように、ミニマム・アクセスorカレント・アクセス内は、低関税を適用しなさい、という枠であって、その数量を必ず輸入しなくてはならないという約束ではまったくない。低関税でのアクセス機会を開いておくことであり、最低輸入義務などではなく、それが満たされるかどうかは関係ない。
欧米にとって乳製品は外国に依存してはいけないから、無理してそれを満たす国はない。かたや日本は、すでに消費量の3%を遥かに超える輸入があったので、その輸入量を13.7万トン(生乳換算)のカレント・アクセスとして設定して、毎年忠実に満たし続けている、唯一の「超優等生」である。コメについても同じで、日本は本来義務ではないのに毎年77万トンの枠を必ず消化して輸入している。米国との密約で「日本は必ず枠を満たすこと、かつ、コメ36万は米国から買うこと」を命令されているからである。
農水省は最近、こう説明したという。「国際約束上、最低輸入義務とは書かれていない。ただ、国家貿易で輸入している場合、カナダの乳製品については、毎年必ずではないが、枠いっぱいを輸入している年もある。日本が枠を満たさなかった場合、WTOに訴えられる可能性を恐れている。」意味不明である。国際約束でないのに、訴えられるわけがないし、訴えられても、訴えは退けられるはずだ。何を恐れているのか。
もう限界である。いくら米国が怖いからといっても、その制約を乗り越えて、他国の持つ国家安全保障の基本政策を我々も取り戻し、血の通った財政出動をしないと日本は守れない。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米多収日本一 山口県のあぐりてらす阿知須 10a当たり863kg2025年3月3日
-
【特殊報】ナシ胴枯細菌病 県内で初めて発生を確認 島根県2025年3月3日
-
政府備蓄米売り渡し 入札 3月10日に実施 農水省2025年3月3日
-
新潟県の25年産米概算金「コシ2.3万円」 早期提示に歓迎の声 集荷競争、今年も激化か2025年3月3日
-
米の集荷数量 前年比23万t減に拡大 農水省2025年3月3日
-
米価高騰問題への視座【森島 賢・正義派の農政論】2025年3月3日
-
【次期家畜改良目標】低コスト、スマート農業重視 酪農は長命連産、肉牛は短期肥育2025年3月3日
-
【改正畜安法の現状と課題】需給対策拡大が焦点 問われる「国主導」2025年3月3日
-
あなたたちは強い〝武器〟を持っている JA全国青年大会での「青年の主張」「青年組織活動実績発表」講評 審査委員長・小松泰信さん2025年3月3日
-
JA農業経営コンサルタント 15人を認証 全中2025年3月3日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年3月3日
-
農業用バイオスティミュラント「エンビタ」とは 水稲育苗期にも効果 北興化学工業2025年3月3日
-
アミューズメント施設運営「ティスコ」株式を譲受 農林中金キャピタル2025年3月3日
-
「2025ローズポークおいしさまるごとキャンペーン」でプレゼント 茨城県銘柄豚振興会2025年3月3日
-
福岡ソフトバンクホークスとのオフィシャルスポンサー契約更新 デンカ2025年3月3日
-
ファーマーズ&キッズフェスタ2025 好天で多数の参加者 井関農機は農業機械体験2025年3月3日
-
【今川直人・農協の核心】産地化で役割が高まる農協の野菜取り扱い2025年3月3日
-
野菜がたっぷり食べられるカレー味「ケンミンカレー焼ビーフン」新発売2025年3月3日
-
第164回勉強会『海外市場での植物工場・施設園芸の展開』開催 植物工場研究会2025年3月3日
-
春の山梨の食材の魅力を伝えるマルシェ 5日から国分寺マルイで開催 雨風太陽2025年3月3日