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跳ねる1年に、「よーいドン」の計画づくりを見直そう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年12月27日

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来年は卯年、過去を乗り越え、跳ねる年に

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次

12月になると、来年はどんな年になるのか、が話題となり、引き合いに出されるのが干支でした。昭和の時代の思い出かもしれません。来年の干支は兎(卯年)ですから、跳ねるというイメージがあり、景気は上向き、回復する。株式市場にとっても縁起の良い年とされます。

戦後70年間の干支年別の平均株価値上率ランキングを調べると、卯年は4番目で16.3%。辰年が1番高く27.9%、次いで子年22.8%、亥年16.8%と続きます。「辰巳(たつ・み)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さる・とり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)はつまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる」、若かりし頃は、しっかり憶えたものですが。

さて、今年の10月、IMF(国際通貨基金)が2023年の主要7カ国(G7)の経済成長率を含む「世界経済見通し」を発表しました。記憶のある読者もおられると思いますが、意外にも、日本の成長率は他の先進諸国を抑えてトップに挙げられています。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などで、各国とも経済的に苦悩しています。IMFは、来年の日本の実質国内総生産(GDP)成長率1.6%とし、エネルギーの輸入価格の高騰、賃金上昇を上回るインフレなど、困難な環境の下にはあるが、軒並み成長率を落とす欧米主要国に比べ、日本は「底堅い」としています。

12月20日、日銀は金融政策決定会合で10年近くに及ぶ大規模金融緩和策を転換。黒田総裁の意向に反し、市場は利上げと受け止め、長期金利は上昇、円高の進行、株価は続落。新年を前に、政府・日銀えへの信頼低下。来年は跳ねないかも。

「先行分析」と年度をまたぐ優先課題(KGI)への取組み

12年前の卯年はけっして忘れられません。2011年3月の東日本大震災。未だに傷跡深く、復興は優先です。そして、なでしこジャパンがサッカーW杯優勝。円ドル相場が歴史的円高を記録(10月31日)、75.54 円。現在のほぼ半値、干支が一回りする間の急速に変化と展開に驚かされます。

JAの事業・経営は、経済予測が大きく反映するわけではなく、事業・経営に責任ある経営者や幹部職員は、早い機会に、JA自身の事業・経営計画の策定の情報やヒントを入手し、優先的課題の絞り込みにより、①事業戦略の明確化、②経営資源の集中、を企図することが重要で、頭の痛い時期だと思います。

そこで、計画策定において、改善方法の一例を紹介したいと思います。JAは来年度の事業計画の策定を、12月に入ってから各部門で一斉にたたき台をつくる、いわば「よーいドン」で作業し、それを全体で検討・調整するという策定プロセスが多いです。これでは、きわめて平面的で、メリハリに欠け、前年踏襲になりがちで、対前年比の数値や目標調整に終始しかねません。

そこで、中長期の農業振興策の優先的に取り組む振興戦略作物の計画化を例に、実際のプロセスを紹介します。JAの中長期戦略では、競争優位性の高い作物、これから伸張できる可能性の高い戦略作物(5~6品目)が掲げられ、品目別の販売高、単位収量、平均単価、秀品率などの主要項目について、数値目標(KGI=重要目標達成指標)を設定しています。

これらの作物は、年度の当初から年度末まで生産・出荷しているわけではありません。夏に出荷を終えるもの、9月、10月・・・に出荷を終えるものもあります。そこで、作物によっては、機動的に次年度に向けた活動を先行させます。出荷が終え、一段落した時点で区切りを付け、中心的な生産を担うモニタリング農家にJAデータの提供を行います。その後、生産者側からもデータ提供をお願いし、ヒアリングを実施します。

ヒアリングでは、生産規模、販売金額・数量、平均単価、反収、秀品率、生産費、所得率などのデータとともに、生産者の反省と改善への思いなどの意向も把握します。モニタリング生産者数は1品目20~30経営ほどです。この作業は、営農・経済の職員チームで行い、生産者のヒアリングもチームで行い、集計します。

JAの早い、強いメッセージが生産者を動かす

JAは農業振興の柱を、作物別の販売金額とするケースが多いのですが、もっとも重要なのは、生産者の経営の成長、数値の向上であり、所得の増加です。紹介した先行的な取組みは、生産者を起点にした実績数値を示すことで、中長期の農業振興計画の実質的な成果、評価を行うためです。

振興計画を策定しても、毎年フォローし、戦略作物の実情を開示し、次年度以降の生産振興や生産者の所得増のためのJAの方針を示すことが重要です。事例で紹介したように、年をまたがず、早い時期でのJAの方針などの強いメッセージは、生産者の次年度の営農計画や改善方策などの意欲を高めますし、何より、JAにとっても肥料や農薬、生産資材、機械などの経済事業の利用や事前予約に波及します。

モニタリングでお世話になる生産者は、JAのなかでもヘビーユーザーです。経済事業などの事業利用実績が高く、総合事業利用度もモデル的存在です。それは、JAの事業計画に反映させたい確かで価値あるデータであり、組合員ニーズとしても貴重な情報です。

また、JAの次年度の農業振興に向けた基本施策の見直し、特別支援施策の検討などにも反映でき、営農指導部門と販売部門・経済部門それぞれの対応方針、その一体性・連携などの検討にも活かされ、課題山積の農業関係会議ですが、前向きな会議に変わります。

最後に、この業務に関わった若手営農・販売担当職員は、1年で急成長すること請け合いです。

本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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