「花き」の「き」ってなに?【花づくりの現場から 宇田明】第1回2023年1月12日
本日(1月12日)より新コラム「花づくりの現場から」を隔週木曜日に掲載します。筆者の宇田明さんは、長年、兵庫県淡路農業技術センターで切り花の栽培技術や育種の研究に取り組み、退職後も、「宇田花づくり研究所」代表などとして、花き産業の振興や技術指導などにあたり、花き業界で大変よく知られています。コラムを通じて花に関連する幅広い話題についてお伝えします。
花づくりの現場から、花に関するさまざまな情報をお届けすることになりました。
自由主義経済、市場経済の真っただ中で生きる花は農業の異端児であり、傍流のマイナー品目。
20世紀末まではイケイケドンドンで成長、拡大してきましたが、今世紀になってからは右肩下がりで、苦しんでいます。
農業の本流を歩む農業協同組合新聞(JAcom)でのコラム執筆は、どちらかというとアウエーであり、敷居が高い気がしますが、花の現状を知っていただき、さまざまなアドバイスをいただけることを期待しています。
花は正式には「花き」と称しています。農業関係者でも「花き」をどう読むのかもわからないひとは多いと思います。
花き組合総会での来賓祝辞。
開口一番、「『はなき』組合総会、まことにおめでとうございます」。
花き生産者は驚きもしないし、笑いもしない。よくあることだから慣れています。
「花き」は「かき」と読みます。
「かき」を担当していますと自己紹介すると、「柿?」、「牡蠣?」と聞きかえされます。
花の「かき」ですと返答すると「???」。
花市場や花店の新入社員研修を担当していたことがありますが、花きの「き」を漢字で正しく書けたひとはほとんどいません。
多くのひとは「花木」と書きます。「花木」は「かぼく」で、サクラやツバキのように花が咲く木のことです。
「花き」の「き」は「卉」と書きます。花弁(かべん)の「弁」とよくまちがわれます。
常用漢字にないので、「花き」とかながきにしています。
大学の花き園芸学の授業では、最初に花卉とはなにかを習います。
花き園芸学のバイブルといえる塚本洋太郎「花卉総論」(養賢堂 1969年)は、次のような文章からはじまります。
「花卉は花と卉の二つからなっているが、どちらも観賞植物という意味で、卉は花に対する修辞として用いられている。観賞植物というのが最も正しいが、長いので花卉が用いられるようになった。平易なことばを用いるという立場からは草花ともよばれているが、今までの慣例で草花にはサクラやツバキなどの花木類が含まれていないように感じられる。やむをえず花卉ということばを使用するわけである」。
このように、やむをえず「花き(花卉)」をつかっています。
蔬菜(そさい)が野菜にかわったときに、花卉もわかりやすいことばが検討されましたが、よい案がなかったのでそのままになっています。
多くの大学は「観賞植物、観賞園芸学」にかわりましたし、農業高校の教科書は「草花」になりました。
しかし、日常でつかうには、「観賞植物」や「草花」ではしっくりきません。
一方では、「花き」がつかわれるのは、昔からの組織名と、お役所の文章ぐらいになりました。
例えば、農水省で花を所管しているのは「花き産業・施設園芸振興室」、生産者の全国組織は「日本花き生産協会」、花の市場は「日本花き卸売市場協会」。花に関する法律は「花き振興法」。
市場経済の申し子である花はお客さま優先。
業界人でさえわからない「花き」を消費者がわかるはずがありません。
消費者がわからない「花き」は組織名以外ではつかう必要もなく、日常は「花」で十分用が足ります。
花き業界のひとでさえ、日常に「花き」をつかうことはないのですから。
その点、議員さんは柔軟。花関係の国会議員連盟の名称は、「フラワー産業議員連盟」です。
宇田明 神戸市出身。千葉大学園芸学部園芸学科卒業後、1970年から兵庫県立農業試験場淡路分場(当時)で花き担当研究員を務める。1996年、「STSによる切り花の日持ち延長技術に関する研究」で農学博士取得(大阪府立大学)。2008年に兵庫県を退職後、宇田花づくり研究所を設立。園芸学会賞、農業技術功労者賞、松下幸之助花の万博記念賞などの受賞歴がある。著書に「カーネーションをつくりこなす」、「花屋さんが知っておきたい花の小事典」など。
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