(316)ロングテール【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年1月20日
勤務先の大学では卒業論文の作成で大学生が煮詰まっています。本日の会話から少しばかり…
今年のゼミ生の中にある食品を対象としている学生がいる。東北のある地域Aを対象に簡単な予備検討を行い、それを元に東北の別の地域Bと地域Cで一定の方法によりデータ収集を実施した。現在までにほぼこの2地域のデータは揃えたが、問題は残り期間で九州のある地域Dをやるかどうかで相談に来た。
ざっと見て、Aは50件、Bは400件、Cは800件、そしてDは正確ではないが約2,000件といったところだ。これらのデータを一定の基準に基づき分類し、その傾向を顕わにする。その上で、これまでのヒアリング調査などで得てきた定性的なデータと突き合わせ、「言葉と印象」を数字で顕在化させるというようなことを実施している。
さて、BとCのデータ収集を概ね終了した段階で簡単にまとめた内容を聞いたところ、どうも典型的なロングテール(長い尾)、というよりショートテール状態のようだ。
ロングテールについて大昔、我々が学んだ時は、例えば「8割の利益は2割の優良顧客から生まれる」などと言われた。これはパレートの法則としても有名であるため、昔、経済学などを学んだ人は覚えていると思う。
様々な顧客のニーズに対応するために幅広く数多くの商品やサービスを手がけるのは手間もコストがかかる。したがって、上位2割の製品やサービスに注力しろ、ロングテールのテール部分は無駄・不要などと言われたものだ。
かつて社会人になった頃、利益がわずかしかない少量の品目を何十も抱え、必死に事務処理をしていたことを思い出す。下手をすると1日中事務処理をしていた。また、確認印の押し忘れや単価のミスなどで突き返されると修正にとてつもない時間がかかった。
ところが、インターネットが普及し、かつての常識が大きく変わるケースが続々と登場してきた。ひとつかふたつ、上位1割か2割の利益率の高い製品が相変わらず注目されるが、実は残りの8割の細かな製品を合わせると全体の利益のかなりの部分を占めるようなケースが出てきたからだ。
アマゾンのビジネス・モデルなどは典型的だ。職業柄、書籍を良く購入するが、最新のベストセラーから何年も前の書籍まで検索1回と数回のポチッ!で購入できる。要は、目標物に到達するまでの検索機能が向上し、コミュニケ―ション・コストが劇的に低下したということだ。極論を言えば、例えば書籍の場合、2~3か月に1回しか売れない本でも在庫として持つことが可能になる。また、そうした書籍の販売合計がとてつもなく大きくなる可能性を意味している。
それでも書籍には少なくとも保管用の倉庫が必要になるが、データであればさらに状況は異なる。売り場や倉庫という概念、あるいは制約がほとんど消失したと考えて良いかもしれない。現実的には、地価の安い郊外の巨大店舗に膨大な品揃えをした大規模店舗を設置、あるいは電子空間の中に在庫をデータとして蓄積する、などが選択肢となる。
さて、卒論の話に戻ろう。対象としている製品は主要形態が1~2、その他にユニークな形態を持つ各種のバリエーションがあるが、その数はロングテールと言えるほど多くない(と今のところは考えている)。気象条件や歴史、その他様々な制約条件の中で特定地域限定のような形で好まれてきたモノの今後をどうするか、仮に全国規模のマーケットにアクセス可能でもその方向は本当に良いことなのか、展開を進めた場合、生産と供給は追いつくのか...、いろいろな課題が考えられる。
もちろん最終的な結果が出てからの考察になるが、学生は今後の戦略をどう考えるか楽しみである。
* *
締切は1月末、これから10日ばかり、1年間、というよりも大学生活の総仕上げとして徹底的にアタマを使って頂く期間となります。
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