中米逆転のXデーは2030年1月2日【森島 賢・正義派の農政論】2023年2月13日
IMFが世界の主要国のGDP予測を発表した。これは短期予測だから、長期予測に利用するのは無謀だが、数年後を想定した予測をしてみよう。
ここでは、中国と米国をとり上げる。両国の間には、予測した成長率に大きな違いがある。つまり、中国のほうが成長率が大きい。だから、このままでは、やがて中国が米国に追いつき、追い越すことになる。つまり、米国は世界第1の経済大国から転落して、中国がそれに交代する。
そのXデーは、いつになるか。この点を考えてみよう。
上の図は、IMFによる世界の主要国のGDPの予測だが、超短期予測である。経済発展の瞬間風速、といっていい。そのうち、中国と米国の予測結果をみたものである。参考のために、日本も加えた。
結果をみると、24年のGDP成長率は、中国4.5%、米国1.0%で、その差は大きい。つまり、予測した中国経済の回復が、多くの識者の予想よりも早い。これは今後の中国のコロナの弱毒化と、人口の減少の影響についての見解の違いによるものだろう。
いずれにしても、この差が今後も続けば、中国はやがて米国に追いつき、経済大国の順位が逆転することになる。
そのXデーはいつか。
◇
ここでの関心は、この瞬間風速が、長期に続いたらどうなるかである。単純な計算をしてみよう。
24年の瞬間風速が続いたらどうなるか。
22年のGDPをみると、中国は19.9兆米ドル、米国は25.3兆米ドルである。これを起点にして2024年の瞬間風速の風が続くと、23年末から2194日後、つまり30年1月2日には、中国が米国を追い抜いて、経済大国の第1位になる。現在から数えると、7年たらずの後である。
なお、表のなかに日本も入れて、その凋落ぶりを示した。だが、ここでの主題ではないので、数字だけを示した。
◇
この計算は、瞬間風速を根拠にして、長期予測をしたものである。だから、これは単純すぎるだけでなく、無謀ではないか、という批判があるに違いない。
たしかに、この批判には一理がある。だが、いったい何のために、このような予測をするのか。
かつて、神谷慶治先生が言ったことがある。経済予測は、ことに長期予測は、「当てる」ことが第1の目的ではない。そうではなくて、現在の政策を続ければ、その結果としての経済発展の「風」は、どの地点に向かって、どれほどの速度で吹いていくか、そして、それでいいのか、その覚悟はあるか。ここに予測の第1の目的がある、と。
つまり、「風」は政策の結果である。人為ではどうにもできない自然現象ではない。だたら、「風速」の測定は、政策を評価するための、重要で分かり易い1つの方法である。
◇
以上のように、Xデーは2030年1月2日である。その前日に、偶然にも元旦だが、パックス・アメリカーナの時代が終焉を迎え、この日からパックス・シニカの時代が復活する。
中国のなかには、Xデーの到来をもっと早めたい、と考える人がいるだろう。また、米国のなかには、Xデーをなくしてパックス・アメリカーナを続けたい、と考える人がいるだろう。
両方の考えは、ともに努力しだいで実現可能である。これは、人為の努力が及ばない自然現象ではなく、人為である社会活動、つまり政治活動、経済活動の結果だからである。
◇
だが、この人為のなかに、武力の行使があっては決してならない。武力による威嚇もあってはならない。そのように、世界の大多数の人が考えている。
そうではなくて、平和のなかでの、互いの切磋琢磨を望んでいる。
◇
最後に、ひとこと加えたい。
GDPの指標を否定する人がいる。経済成長そのものを否定する人もいる。その一部には、肯定できる部分がある。
しかし、この人たちが、いまの社会を桃源郷と考えているのならともかく、そうでないと考えているのなら、いまの社会を評価する方法と結果を、事実と論理に基づいて示すべきである。その上で、いまの社会が向かうべき方向と、そのための政策を、分かり易く具体的に示すべきである。
それが、民主的な科学というものだろう。
そして、みんなの力でパックス・シニカを広げ、パックス・ワールドにしたいものである。
(2023.02.13)
(前回 感染症研究で日本は12位)
(前々回 弛緩した食糧安保論議)
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