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翼賛化する報道【森島 賢・正義派の農政論】2023年2月20日

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ウクライナ紛争についての日本の報道をみると、第2次大戦中の報道を見ているようである。まるで、大政翼賛会の報道のようだ。
あのころの報道は、そのほとんどが大本営の発表したものを、そのまま伝えていた。正義はわが軍にあるとして、事実を隠し、架空の戦果を讃え、軍と政府を翼賛する報道だけだった。軍と政府が、中国をはじめ、アジアで何をしているのか、真実は全く知らせなかった。
その結果、終戦を遅らせ、戦災を広げた。東京大空襲では10万人を超える人たちが死亡した。広島では16万人超、長崎では7万人超の人たちが原爆で死亡した。
いま、日本の報道機関は、ウクライナ紛争で、同様なことを行っている。
この根源には、これを矯正できない日本の知性の劣化がある。

翼賛化する報道

上の図は、ウクライナ紛争について、先週NHKが「ロシア軍事侵攻」という特設欄で報道した記事の数である。米欧側が発表した記事と、ロシア側が発表した記事とに分けて、その数を示した。

これをみると、米欧側のほうが圧倒的に多い。

ここでは、NHKだけを取り上げたが、他の報道をみると、ロシア側の発表を、ほとんど全て無視する機関が少なくない。

ウクライナ紛争を、一刻も早く終結させたいと考えない人はいないだろう。それには一方が他方を屈服させて、無条件降伏させるか、あるいは、外交交渉で両者が妥協するしかない。

ロシアが無条件降伏することは、考えられない。ロシア国民の、プーチン大統領にたいする支持率が、80%程度を維持し続けているからである(ロシアの独立系世論調査機関「レバダセンター」)。米欧も無条件降伏はしないだろう。

だから、戦争を終結させるには、外交に期待するしかない。それには、ロシアの米欧に対する要求は何で、米欧のロシアに対する要求は何か、を知らねばならない。

外交は内政の延長だという。だから、両者の要求を外交官だけが知っていても交渉はできない。日本が外交的解決に協力するというのなら、日本の国民も両者の要求を知っていなければならない。

報道の社会的責任は、この点にある。だが、日本の報道は、この点の自覚がない。

だから、プーチン大統領を、極悪非道な人非人のように報道している。ちょうど、大政翼賛会が鬼畜米英といったのと同じである。そして、米国の大統領やウクライナの大統領を、正義の味方のように報道している。これでは交渉できないし、交渉に協力することもできない。

それどころか、日本の報道は、ウクライナ紛争の外交的解決を妨害している。そうして、戦禍を広げている。

中国、印度をはじめ、アセアン諸国や中東、アフリカ、中南米の諸国をみると、これらの国々は、ロシアの要求を理解している。だから、米欧のロシアに対する制裁に加わっていない。

これらの国々の人口を合計すると、世界の人口の85%を超えている。つまり、合計しても世界の人口の15%以下しかない一握りの国が、いきり立ってロシアを制裁している。

最後に強調しておきたい。それは、以上のような報道の翼賛化が何故おきているか、という点である。

それは、直接には報道人の知性と品性の劣化である。そして、報道機関の堕落である。しかし、それだけではない。その背後には、この翼賛化した報道を、無意識にせよ支えている読者の知性の劣化がある。

そして、さらにその背後には、オレさえよければいい、という市場原理主義の悪霊が見え隠れする。これは幻影ではない。日本社会に秘かに弥漫するこの悪霊を、先ず退治しなければならない。

(2023.02.20)

(前回   中米逆転のXデーは2030年1月2日

(前々回  感染症研究で日本は12位

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