切り花の自給率は72% 望まれる原産地表示【花づくりの現場から 宇田明】第4回2023年2月23日
食料自給率は38%(カロリーベース)ですが、花はどれぐらい自給できているのでしょうか。
2021年に流通した切り花は45億本。そのうち国産は32億本、輸入は13億本で輸入率は28%です。すなわち、切り花の自給率は72%(数量ベース)。
これは、米の98%(重量ベース、以下同じ)、野菜の79%よりは低いが、イモ類の72%と同じで、果実の39%よりは高い。
かつて花づくりは先進国の産業で、1980年代まではアメリカが最大の花の生産国でした。それが、南米からの麻薬密輸入に悩んだ政府が、「 Don't sell drugs, Sell flowers 」の政策で、コロンビアに麻薬のかわりに花づくりを推奨し、輸入しました。その結果、アメリカの切り花生産は壊滅し、花づくりの中心はオランダに移り、今日までつづいています。その花の国オランダも人件費、天然ガスの高騰などで国内生産が激減、切り花生産国でなくなりつつあります。
現在は、赤道に近い高地で1年中日射が豊富で温暖なコロンビア、ケニア、マレーシアや中国昆明などに産地が移っています。
いまや先進国で、花の消費大国であり、生産大国であるのは日本だけといっても過言ではありません。その日本でも、切り花の輸入が年々増えつづけ、自給率は下がる一方です(下図)。生産大国日本はまさに風前の灯火。
なぜ輸入が増えたのでしょうか。
人は珍しいものを好むことと、バブル崩壊後、国内生産が減ったためと考えられます。
1980年ごろから始まった輸入は、タイの洋ランなど熱帯の花でした。日本では栽培がなかった珍しい花を消費者は歓迎しました。
1990年代からは、わが国の切り花生産の本丸といえる温帯性のキク、カーネーション、バラなどの輸入が急増しました。バブル崩壊後、市場価格が低迷したことと生産者の高齢化による国内生産の減少を輸入で補ったためです。
国産が減ったから、輸入が増えたといえます。それは今も同じ状況です。コロナ禍や円安などで輸入は増えてはいませんが、国産が減っているので、輸入率は高くなりつづけています。
1985年に花の関税が撤廃されたことも輸入が増えた大きな理由ですが、関税の問題は別の機会に報告します。
国産のシェアを奪還し、自給率を上げるにはどうすればよいのでしょうか。
ひとつの手段が原産地表示です。
JAS法で生鮮食品、加工食品には原産地表示が義務づけられていますが、食用でない花は対象外です。そのため、ほとんどの花屋さんは原産地を表示していないので、お客さまは店頭の花が国産か輸入か、どこの産地かがわかりません。
神棚、仏壇、お墓にお供えするサカキ(榊)やヒサカキの90%以上が中国産であることも知らされていません。これらの原産地を表示している花店では、価格が2倍以上するにもかかわらず国産から先に売れている事例があります。消費者は、神さま、仏さま、ご先祖さまには国産の花をお供えしたいと考えています。
直売所では、花にも産地名、生産者名が表示されています。直売所の売り上げが好調な要因の一つはこの情報開示です。お客さまが花を選ぶときに、選びやすいように情報を提供することは花店の責務です。
花産業は、JAS法の改正を待つのではなく、お客さまへの情報提供として原産地表示を推進すべきです。そのうえで、国産を選ぶか輸入を選ぶかは、お客さまの判断に任せればよいのです。
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