シンとんぼ(32)スマート農業は役に立つのか?⑥2023年2月25日
シンとんぼは、現在、スマート農業が本当に役立つものなのかをテーマに検証するため、農水省ホームページに紹介されているスマート農業技術を①GPSを利用した自動操舵・制御による農業機械、②農業用ドローン、③水管理システム、④自動草刈り機、⑤収穫機、⑥出荷調整機の6つに整理し、検証を進めている。
今回は、②農業用ドローンの続きで、ドローンの導入コストやランニングコスト、その他のメリットを検証してみよう。
農業用ドローンの導入には機体の購入費用として百数十万円かかるのが一般的だ。また、ドローンは1回の飛行で10~15分程度しか飛行できないので、1回の飛行で散布できる面積はどんなに多くても1ha程度だ。このため、連続して複数のほ場を散布しようとすると予備のバッテリーが必要になり、それを機体購入時に購入しておく必要がある。この予備バッテリーがリチイムイオン電池という高価なもので、1セット10万円程度する曲者だ。一日あたり10haを散布すると仮定すると飛行数は10回となるので、全部でバッテリーが10セット必要になる。なので、単純に計算すると余分に9セット購入しなければならないことになり、この場合は、90万円が導入費用に加算される。
そこまで投資しなくても、移動時間や薬剤の準備等で飛行していない時間もカウントし、急速充電器で充電しながら作業を進めて、予備バッテリーの必要数を約半分の4セット40万円程度で済ませれば、機体の導入費用は約160万円程度になるだろう。これに加えて、操縦者講習の費用20万円(講習機関によって異なる)、年間のメンテナンス費用20万円(販売店によって異なる)、さらに保険代10万円弱で、しめて導入時の費用は約200万円、2年目以降のランニングコストはメンテナンス費20万円(人件費除く)+保険代10万円の計30万円程度となるだろう。この他に、粒剤や播種に使用するのであれば専用の散布装置が必要になるので、費用はさらに多くなるし、メーカーや導入機種が違えばかかる費用は異なってくるだろう。
農薬散布を無人ヘリ防除に委託すれば、10アールあたり薬剤費を除く散布料を2000円と仮定して計算すると20haの経営であれば、計40万円で済む。これは、ドローンの導入費用・ランニングコストに比べればずいぶんと安い。ただ、ドローンを個人所有していれば、委託散布のスケジュールに関係なく、防除適期に自分で散布できるので効果を重視する場合にはメリットとなる。もし、仮に防除適期に散布できなかった際の品質低下をドローン導入によって回避できたとすれば、等級の低下による単価下落を防ぐことによって、ドローンのランニングコスト分くらいのもとは取れるだろう。いずれにしろ、ドローン導入で得られるメリットが導入費用数百万円に見合うかどうかは農家個々の判断となるだろうが、導入してよかったと感想を持つ農家がいるのも事実だ。
導入にあたっては、自分の経営に照らして、本当にメリットがでるかどうかよく考えてからにした方がよいだろう。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日