シンとんぼ(34)スマート農業は役に立つのか?⑧2023年3月11日
シンとんぼは、現在、スマート農業が本当に役立つものなのかをテーマに検証するため、農水省ホームページに紹介されているスマート農業技術を①GPSを利用した自動操舵・制御による農業機械、②農業用ドローン、③水管理システム、④自動草刈り機、⑤収穫機、⑥出荷調整機の6つに整理し、検証を進めている。
今回は、③水管理システム検証の続きで、開放系水路向けの水管理システムを検証してみよう。
開放系の水路は、加圧された用水を供給するパイプラインと異なり、用水路に流れる水を水田に引き入れるため、用水路に流れる水量・水勢によって水を溜める時間が異なってくる。ということは、入水完了までの時間が、水を引く用水路や田んぼ毎に異なるため、所定量の入水時間をつかめるまでは何度か水位を確認しなければならず、筆数が増えれば、手間と時間のかかる厄介な作業になる。この厄介な作業を代行してくれるのが開放系対応の水管理システムである。このシステムは、基本的に水田に溜まっている水の量を計測する水位センサー部と水口を開閉する機構部とに分かれ、メーカーによってそれぞれの形状や仕組みが異なる。
例えば、水田で使用される水位センサーであれば、水位に合わせてフロートが浮き沈みすることで推移を計測する単純な構造のものや、水位による圧力(水圧)の違いを検知するもの、電波や超音波を飛ばした反射時間を計測して水位を検知するものがある。単純なフロート式の場合、構造も簡単でコストも安く済むが、水田の場合、藁の残骸など浮遊物が多く、それらがセンサーに付着したりして、常にセンサー部を綺麗にしておかないと正確に計測できないという欠点がある。その他の機構のものは、測定精度は増すが、導入コストで課題が残る。
次に水口を開閉する機構であるが、実際の水門に近いシャッター式や用水の導入部にチューブを使用しそのチューブを塩ビパイプに通してそれを上下することで入水を制御する方式がある。
前者のシャッター式の場合は、隙間にイネ藁などが詰まって完全な開閉ができなくなるなどの欠点があり、もっぱら塩ビ管の上下による開閉方式を採用するものが多い。いずれの開閉方式も駆動はモーターで行い、その電源はバッテリーを使用する。バッテリーには乾電池を使用するもの、太陽光パネルによる充電式を用いるものがあるが、単純な機構の水管理システムであれば、毎年交換する手間はあるが乾電池でも1作期を通しての水管理には十分のようである。ただ、最近では、田面の映像を送信する機能や遠隔から開閉操作できる機能を持ったものも登場しており、そのような場合には、太陽光パネルによる充電機能が必要のようだ。
もちろん、どのような機能を持ったものを選択するかは個々の判断にもよる。しかし、単純な機構のものでも1台5万円程度するため、筆数が多くなれば設置コストも大きくなる。なので、移動に時間がかかる水田にのみ設置するなど、水管理にかかっている時間と労働費を精査した上で費用対効果を考慮しながら導入台数を検討する必要があるだろう。
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