【浅野純次・読書の楽しみ】第84回2023年3月18日
◎宮路秀作監修『地図でスッと頭に入る 世界の三大穀物』(昭文社、1815円)
世界の3大穀物といえば小麦、コメ、大豆ですが、それらの生産、貿易、消費を中心に、現状と歴史的経緯など全頁、カラーで図解されていて、頭にすっと入ってきます。
ざっとはわかっていたつもりの事実、意外に盲点で知らないでいた事実、いろいろですが、特に内外の産地についての基本的事実が詳しく整理されているのは何よりでしょう。
小麦でいえば硬質、軟質、中間質の種類ごとの用途、世界の生産、日本の輸入の状況となると案外、知らない人が多いのでは? 対日輸出国といえば米国、カナダ、オーストラリアですが、世界の生産では中国とインドがずば抜けて多く、最大の輸出国はロシア、とは知りませんでした。
米作農家の努力が並大抵のものでなかったことが、反当り収量の劇的増加のグラフから明白です。市町村別産出量で、1位新潟市はともかく、以下、大仙、鶴岡、横手とはこれも寡聞にして知らず。
トウモロコシは世界的にGM(遺伝子組み換え)が急増していますが、日本の輸入では飼料と工業用以外は非GMであることも貴重な情報です。
食料自給率や農政について考えたり議論するときなど、この本にある知識くらいは頭に入れてからにしたいものと痛感しました。
◎原田泰『プーチンの失敗と民主主義国の強さ』(PHP新書、1078円)
初めにお断りしておきますが、著者はロシアや東欧の専門家ではなく、軍事専門家でもありません。ロシアとウクライナの戦争を理解するのに役に立つ本ですが、「自由を守るウクライナの戦いを経済学から読む」という副題のとおり政治と経済社会一般が主題です。
まず戦争前の状況から。西を向いた東欧諸国は豊かになり、ロシア経済は原油と天然ガスを除けばガタガタでまるで大国ではない。この事実はロシアの侵攻の重要な伏線であり、ロシアに勝機は薄かったのだろうと自然に納得してしまいます。
独裁者のコンプレックスとか大国意識、侵攻に至る心情を踏まえて、この戦争では結局、「民主主義は弱くない」ことが解明されていきます。この部分が本書の白眉です。
ロシアによる武力恫喝が主題ではあっても、民主主義とは、自由経済とは、そして軍事力と平和の関係についてという私たちの生活の基本となるものが解明されていって、とても刺激的な内容になっています。民主主義の本質を論じた好著です。
◎伊賀瀬道也『100歳まで生きるための習慣100選』(飛鳥新社、1650円)
100歳まで生きられるといっても、健康寿命としてでなければ残念ですね。そのためのヒントが100、食、運動、生活習慣、脳とメンタル、医療の5分野に分けて手際よく説明されていきます。
食でいえば最新の栄養情報に基づいているとはいえ、無機的な話ではなく、マクロビ(禅式長寿法)に通じるものを感じました。実はこれは私が50年続けている食生活に非常に近いので、合点がいくことばかりでした。
和食の一汁三菜&魚が推奨される一方で、焦げた食物は体の酸化を招くとか、油には気をつけようとか(食は何より大事ですからね)。そのほか、こまめな運動の勧め、高齢での手術の是非など抗加齢医学の専門家ならではの助言は傾聴に値することがとても多い。
100のテーマが重要度で★2から★5まで区分けされているので、楽しみながら実践できるはず。家族で回し読みしたい優れた健康書として自信をもってお薦めします。
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