シニアに依存する花産業【花づくりの現場から 宇田明】第7回2023年4月6日
前回は、花産業では輸出も輸入も中国に依存しているという話でした。中国は、日本の輸出入相手国のダントツ1位ですから、花の中国依存は特別なことではありません。
花産業には、ほかにも依存しているものがあります。国内消費でのシニア世代です。
今回は、シニアに依存する花産業の問題点と対策を考えます。
図は、総務省家計調査の切り花(ピンク)と生鮮野菜(緑折線)の年代別購入額(二人以上世帯の世帯主の年齢、2022年)。
年齢が高くなるほど購入額が増えています。29歳以下は2,284円、30歳代は2,281円にすぎませんが、60歳代は10,786円、70歳以上は10,994円です。
これは、家庭で使う切り花(ホームユース)が神棚、仏壇、お墓などのお供えが主体であるためです。若い世代の家庭には神棚も仏壇もお墓もないため、必然的に切り花の購入額が少なくなります。
若い世代の購入額が少なく、シニア世代に多いことは多くの農産物に共通しています。
生鮮野菜の購入額はキャベツやダイコンなどの合計であるため、平均購入額は70,843円で、切り花の7,992円より圧倒的に多いですが、若い世代は少なく、シニア世代は多いという傾向はおなじです。
しかし、切り花ほど極端ではありません。切り花はし好品ですが、生鮮野菜は必需品で年齢に関係なく一定額を購入するからです。そのため、生鮮野菜の70歳以上の購入額は、29歳以下の2.1倍ですが、切り花は4.8倍です。このように、切り花は野菜と比べてもシニア世代への依存度が高くなっています。
シニア世代は花のヘビーユーザーであり岩盤支持層ですが、依存しすぎると消費の先細りが予想されます。それは、いまの40歳代、50歳代は親世代より宗教行事や伝統行事に関心が薄く、10年後、20年後にシニア世代になっても、お供えの花の購入額はそれほど増えないと考えられるからです。
では、切り花のホームユース消費を拡大するためにはどうすればよいのでしょうか。
消費拡大活動は選挙運動とおなじで、ふたつの活動が必要です。
ひとつめは、岩盤支持層であるシニア世代の年間購入回数を増やすためのどぶ板選挙的な活動です。
家計調査によると、29歳以下の切り花購入回数は1.2回ですが、70歳以上は11.3回です。花を買う習慣があまりない若い世代の購入回数を2倍に増やすには大きなエネルギーが必要ですが、すでに花をよく買っている60歳代、70歳以上の購入回数を1割増やすことは、花屋さんの日常的な販促活動や接客技術などで達成できます。
ふたつ目は、若い世代にもっと花を買ってもらうために「風」を吹かせる活動です。
選挙で、若い世代が「風」で投票するのとおなじように、花を買ってもらうにも「風」が必要です。若い世代が、多肉植物や観葉植物を好きになったのは「風」の効果です。
いま吹かせつつある風がフラワーバレンタインです。日本では女性が男性にチョコレートを贈りますが、欧米のように、男性が女性に花を贈るのがフラワーバレンタインです。活動をはじめて10年が過ぎ、都会ではすこしずつ広がっています。
おなじように、誕生日や結婚記念日などのメモリアルデーには花を贈ることを習慣づける活動が必要です。
幸いなことに、2014年に花き振興法が制定されてからは、消費拡大、販売促進などに農水省のさまざまなバックアップ事業を活用できるようになりました。
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