シンとんぼ(39)スマート農業は役に立つのか?⑬2023年4月15日
シンとんぼは、前回より農水省ホームページに紹介されているスマート農業技術が本当に役立つものなのかを畜産関係技術について検証している。
畜産で使用されるスマート農業技術は、①センシング/モニタリング、②生体データ活用、③飼養環境データ活用、④自動運転/作業軽減、⑤経営データ管理の5つに分けられており、今回は②生体データ活用について検証してみる。
畜体に装着または挿入された各種センサーから無線通信によってもたらされる生体データをAIが学習・判断して対処の自動化に役立てようというものだ。生体データは、①のセンシング/モニタリングでも活用されるが、①では人間がデータを読み取って必要な対処を行うための指標なり判断に活用するためのものであった。それはそれで便利であるのだが、スマート農業であれば、その判断までも自動化して、さらに農家の負担を削減することを狙っている。しかし、現在の技術でAIが判断して行えるのは、異常体温や分娩開始時期などにおけるアラート機能が主体で、その対処まではできないようだ。AIの機能が高度に発達しアラートの対処まで自動で出来るようになれば、農家の負担を相当減らすことができるようになるだろうが、現状ではまだまだ道半ばのようで、様々なデータを積み重ねながらAIに学習させている段階のようである。
例えば、牛のルーメン(第一胃)内の温度を常時計測するシステムがある。このルーメン内で何が起こっているかというと、牛が食べた飼料が蓄積され、胃内微生物や原生動物によって分解・醗酵され、栄養として吸収できる形に分解させているのだ。これは人間が消化できない牧草やワラなどに含まれるセルロースなどの繊維質を栄養として利用するために、草食動物には絶対必要なものだ。このルーメン内で起こる醗酵は、39℃でpH6~7で良好に進むとされており、この温度がずれると醗酵のスピードが悪くなり、飼養効率に影響が出る。なので、ルーメン内の温度を適温に保てるようにしてやる必要があるのだが、それを計測しながら異常な温度が起こったら、対処を促すアラートが出されるという仕組みだ。
つまり、効率の良い飼育に必要な情報を得るために各種センサーがあり、異常な状態かどうかを判断するためにAIがあるのだが、AIが正確に判断できるようになるにはそれ相当なデータの蓄積が必要のようだ。そのデータの蓄積にあとどのくらいの時間が費やされれば十分なのかはわからない。特に家畜には個性があって個体差があるので、データの蓄積で難しい部分があるかもしれない。しかし、畜産農家の離農が増えている実態がある中、それを打開するためにも、できるだけ早く、多くのAIによる自動化の実現を願っている。
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