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「新支店店舗」は職員の知恵とアイデアで建設しよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年4月18日

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新支店の建設は、職員がプランづくりを

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次

15年ほど前から、支店や支所の再編計画の策定についてのJAのコンサルティングでは、本店と支店の職員のチームで、長期的な構想・計画の策定とともに、建設する場所の選定や建物のレイアウト、設計、費用管理から進捗管理までを行った。

これらのコンサルケースは、約20~40店舗の支所や支店をもつJAにおいて、10年から20年先を考えた将来的な全体の店舗再編構想の策定と、その実施計画としての5~10年計画を策定するというもの。そのうえで、具体的な実施計画にもとづいて再編整備に取り組む過程で、結果的に、約20の新店舗建設を行ってきた。

最初は、疑心暗鬼だった。JAでは、コンサルのサポートと職員のチームの提案で計画まではできても、店舗の具体的な建設は、連合組織の役割で、無条件で建設を委託するケースが多く、職員のチームが中心になって進めることはなかった。また、コンサルも契約以外に出しゃばることはないと思っていた。しかし、プロジェクトチームで調査や分析、議論を進めていく過程で、近隣の金融機関の店舗の観察や車のディーラーなどの店舗視察に出かけ、レイアウトの情報収集、地元の設計・建設会社などの情報など、チーム内に多くの知恵・ノウハウ・データが蓄積していく。

また、新店舗建設用地の選定をめぐって、JAの執行部と一部の理事との間で相違が生じる例を見てきただけに、再編計画の策定で、建設予定地を第1候補から第5候補まで調べて、それぞれの予定地の長短まで分析・整理することで、理事会での議論を一定の枠組みに集約してルール化する必要性も大きな課題であった。

店舗の建設に関しては、言いにくいのだが、連合組織に無条件で建設を委託して、どんな店舗になるか、完成まで一部の役職員がわからない、外観ばかりにこだわり中身は昔ながらの店舗、利用客無視の事務所、職員の使い勝手の悪い店内設備、旧態依然としたレイアウト、職員の意向も聞かず働きにくい、建築費用が高いなどなど。

JA役職員からは、想像以上のたくさんの不平・不満が集まった。同時に、組合員や利用者に親しんでもらう店舗をどうつくるか、どんな店舗戦略・サービスを展開するか、どんな競合戦略を実践するか、職員にとっても快適な店舗とするにはどうするか、といった店づくりのコンセプトをJA内で作成したり、職員から意見を聴取したこともない、という。数十年にわたって、連合組織に業務委託し、お任せしてきた。

そこで、このプロジェクトチームに賭けてみようと考えた。職員をその気にさせ、力を発揮してもらい、JAの上層部や理事会等との円滑なコミュニケーションをとれば、JA全体から評価される計画提案や再編の計画的な実行が可能ではないか、と。

JA職員がその気になれば、納得の手づくりの店舗が

地方銀行や信用金庫では、店舗の新改築や建物の保全管理などを専門に行う部署やチームが存在し、新店舗の建設や改築に関して、私どもコンサルが口を挟む機会はほとんどない。外部環境データや支店内部の取引データなどをもとに、マーケティングの立場から、事業戦略やコンセプトなどの提案を行う程度である。

ところが、JAの支店や支所の再編計画のプロジェクトチームでは、10年後、20年後の地域社会や他金融機関との競争環境などの変化について、各種のデータをもとに推計するとともに、組合員・利用者の利用実態や世帯構成、家族形態などの各種の予測や分析を通じて、新店舗の機能、事業活動、サービス内容のメニューづくり、重点的な事業戦略の展開などを前提に、再編計画に組み込んで提案書を作成する。

北関東のJAのコンサルで、常勤役員会に対して、これまでの新店舗建設をめぐる課題を整理し、再編整備計画書とともに、店舗建設プランとそのプロセス管理の提案をしたところ、総務・金融・共済部門と開発部門の精鋭職員による第2のプロジェクトチームでやってみようということに。

そこで、2つのチーム活動は管理職や現場職員の意見を集約し、方針書を策定、総代会で「支所再編整備方針」が承認されると、店舗建設用地の提案を理事会に行い、地区別のふれあい座談会開催では、チーム職員が計画を説明した。さらに、店舗レイアウトのコンペ、建物設計コンペ・プレゼンテーションを職員チームが主導して開催、地元の設計・建設会社との契約など、建設までスピード感のある進捗を可能にした。

第1のプロジェクトチームは、新店舗のオープン前のマーケティング活動計画を策定し、本店や他の支店の渉外担当者にも協力をお願いして、6か月前からの訪問活動を展開した。ここでは、既存の組合員・利用者の利用実績(家族類型)をもとに4つのセグメントに分けて、テーマ・課題の違いを前提にした訪問活動を行う。さらに、新店舗の店周500mの集中的な訪問・PR活動を行う。この新店舗開設後の事業実績、なかでも利用者(世帯)増加などでは、計画・予測を大幅に上回る素晴らしい成果をあげた。

こうして、JA内の30歳前後の職員による2つのプロジェクトチームでの新店舗建設によって、このプロセスが次にも活かされ、磨かれ、これ以降、5つの新店舗建設を自前で行っている。JA職員がその気になれば、店の建設からマーケティングまで、大いに自信が持てる成果が得られることを証明した。

このJAのコンサル事例によって、JAの執行部への自前での支店建設の提案、プロジェクトチームの活動内容、調査・分析と計画提案など、確かなストーリーができた。

現在の状況はそうはいかないだろう。コロナ禍後の金融支店でどんな事業を行うか、組合員・利用者との関係性をどう築いていくか。ここが見えないと、支店づくりの検討は進まない。きわめて難解なテーマだ。いまなら、この種のコンサル依頼は断るかもしれない。

本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)より、『コラム名』を添えてご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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