シンとんぼ(40)スマート農業は役に立つのか?⑭2023年4月22日
シンとんぼは、前回より農水省ホームページに紹介されているスマート農業技術が本当に役立つものなのかを畜産関係技術について検証している。
畜産で使用されるスマート農業技術は、①センシング/モニタリング、②生体データ活用、③飼養環境データ活用、④自動運転/作業軽減、⑤経営データ管理の5つに分けられており、今回は③飼養環境データ活用について検証してみる。
これは、文字通り畜舎などの飼養環境を監視したり、健全かつ効率良く生産できる飼養環境データを蓄積したりするものである。そのようなデータがあれば、最適な飼養環境に自動で制御することができるようになるので、労働力不足、労働環境改善に役立つと期待されている。
目指す健全かつ効率の良い飼養環境は、生産が上手な畜産家の畜舎のデータを取得したり、研究機関の研究データを取得し、それらをAIに解析させて一般化しようというものだ。現段階では、環境データなどを見える化して、異常がないか監視する見回り的な役割のものが多く、最適環境を自動制御できるようになるには、まだデータ蓄積の段階のようである。しかし、資材費高騰のあおりを受けた畜産家、特に酪農家の窮状を救う手だてとして期待できるのでいち早く実用化できることを期待したい。
しかし、仮に優れたスマート畜産技術が開発されたとしても、これだけ飼料が高騰している状況では、「どこにそんな余裕があるのだ!」と導入をお勧めしてもただお叱りを受けるばかりだろう。多くの場合、新しいシステムというのは、導入当初は数が少ないがたまに導入価格も高くつくので、よほど導入効果が得られ、収支も改善できる見込みのあるものでなければならない。ただ「便利で楽なシステムができたので使って下さい」というだけでは、畜産家の支持は得られないだろう。きちんとした費用対効果を検証した上で、おすすめできるよう、開発の段階からそこを見据えて行ってほしいものだ。
もちろん、導入の際の国の援助は必須だが、その場合も食糧生産の長期的なビジョンを見据えた上で、畜産家にばかり負担が行かないようにしてほしい。だいたい、国の補助金というのは継続性がなく早晩梯子を外されることが多いので、こと畜産関係のスマート農業導入にあたっては、それこそ国策として実行してもらいたいものだと思う。そうしないと、せっかく開発している優れた技術も、畜産農家の経費負担ばかり多くなって、それこそ導入貧乏に陥りそうな気がして心配なのはシンとんぼだけだろうか?
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(164)-食料・農業・農村基本計画(6)-2025年10月18日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(81)【防除学習帖】第320回2025年10月18日
-
農薬の正しい使い方(54)【今さら聞けない営農情報】第320回2025年10月18日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第114回2025年10月18日
-
【注意報】カンキツ類に果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(1)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(2)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(3)2025年10月17日
-
25年度上期販売乳量 生産1.3%増も、受託戸数9500割れ2025年10月17日
-
(457)「人間は『入力する』葦か?」という教育現場からの問い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月17日
-
みのりカフェ 元気市広島店「季節野菜のグリーンスムージー」特別価格で提供 JA全農2025年10月17日
-
JA全農主催「WCBF少年野球教室」群馬県太田市で25日に開催2025年10月17日
-
【地域を診る】統計調査はどこまで地域の姿を明らかにできるのか 国勢調査と農林業センサス 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年10月17日
-
岐阜の飛騨牛や柿・栗など「飛騨・美濃うまいもん広場」で販売 JAタウン2025年10月17日
-
JA佐渡と連携したツアー「おけさ柿 収穫体験プラン」発売 佐渡汽船2025年10月17日
-
「乃木坂46と国消国産を学ぼう!」 クイズキャンペーン開始 JAグループ2025年10月17日
-
大阪・関西万博からGREEN×EXPO 2027へバトンタッチ 「次の万博は、横浜で」 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月17日
-
農薬出荷数量は0.5%増、農薬出荷金額は3.5%増 2025年農薬年度8月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年10月17日
-
鳥取県で一緒に農業をしよう!「第3回とっとり農業人フェア」開催2025年10月17日
-
ふるさと納税でこどもたちに食・体験を届ける「こどもふるさと便」 IMPACT STARTUP SUMMIT 2025で紹介 ネッスー2025年10月17日