【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】食料自給率はなぜ下がったか2023年4月27日
よく言われる誤解は、日本の農地と農業生産力は限られているのに、食生活の変化に伴う食料需要が増大したため、対応しきれなくなった。原因は食生活の変化だから仕方ない。現象的にはそうである。しかし、食生活は、なぜそのように急変したのか。
原因は政策
それは、米国の要請で貿易自由化を進め、輸入に頼り、日本農業を弱体化させる政策を採ったからである。そして、米国は日本人の食生活を米国農産物に依存する形に誘導・改変した。原因は政策である。
江戸時代を思い起こせば、食料自給率は政策の結果だとすぐにわかる。極端に言えば、鎖国すれば自給率は100%なのだから。
世界が絶賛した江戸時代の見事な循環経済
江戸時代の日本は、生活に使う物資やエネルギーのほぼすべてを植物資源に依存していた。鎖国政策により資源の出入りがなかった日本では、さまざまな工夫を凝らして再生可能な植物資源を最大限に生かし、独自の循環型社会を築き上げた。植物は太陽エネルギーとCO2、土、水で成長するから、言い換えれば江戸時代は太陽エネルギーに支えられていた時代だということもできる。(石川英輔氏)
この物質循環の仕組みはヨーロッパ人を驚嘆させた。スイス人のマロンの帰国報告に接した、肥料学の大家リービッヒ(1803~73、ドイツ)は、「日本の農業の基本は、土壌から収穫物に持ち出した全植物栄養分を完全に償還することにある」 と的確に表現したという。
日本を絶賛しつつ破壊した西欧
江戸時代を必要以上に称えるつもりはないが、ここで踏みとどまって「豊かさ」を問い直すときが来ていることは間違いない。幕末に日本に来た西洋人は、質素ながらも地域の人々が支え合いながら暮らす日本社会に「豊かさ」を感じ、絶賛した。
『逝きし世の面影』(渡辺京二著、葦書房、1998年)によると、ハリスが、1856(安政3)年9月4日、下田玉泉寺のアメリカ領事館に「この帝国におけるこれまでで最初の領事旗」を掲げたその日の日記に、「厳粛な反省―変化の前兆―疑いもなく新しい時代が始まる。あえて問う。日本の真の幸福となるだろうか」と記した。
ヒュースケンは有能な通訳として、ハリスに形影のごとくつき従った人であるが、江戸で幕府有司と通商条約をめぐって交渉が続く1857年12月7日の日記に、次のように記した。「いまや私がいとしさを覚えはじめている国よ。この進歩は本当にお前のための文明なのか。この国の人々の質撲な習俗とともに、その飾りけのなさを私は賛美する。この国土の豊かさを見、いたるところに満ちている子供たちの愉しい笑声を聞き、そしてどこにも悲愴なものを見いだすことができなかった私は、おお、神よ、この幸福な情景がいまや終わりを迎えようとしており、西洋の人々が彼らの重大な悪徳を持ち込もうとしているように思われてならない」。
そこまで思ったなら、やめればいいのに、ハリスは日本に「日米修好通商条約」(1858年)を押し付けた。「不平等条約」と呼ばれたその内容は次の通りだった。①米国側に領事裁判権(米国人が日本で犯罪を犯しても日本側で裁けない)、②日本に関税自主権が無く(関税率の改定に米国との交渉を必要とする)、③日本だけが米国に最恵国待遇(他国に与えた条件は米国にも与える)を約束する。そして、輸入税(20%)も輸出税(5%)もすべて一律に5%にさせられた。
領事裁判権の撤廃は1894年に、関税自主権の回復は1911年と「不平等条約」の解消に50年以上かかった、と言われるが、いや、①②③は、実質的には今も撤廃されず、続いているのではないだろうか。
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