(330)「しまほっけ定食」雑感【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年4月28日
しまほっけ定食が好きな人は、食べながら考えて頂ければ幸いです。
世の中の変化は、日々の食生活に直結することが多い。ネットニュースが全盛の時代だが、地上波のテレビから思いもかけない情報を得られることもある。丹念に調べればネットではかなり前に流れていたこともよくあるが、受け取る本人がそこまでフォローできていなければ、実のところ情報ツールの新旧は余り変わらない。
今週は遅まきながらあらためて確認した内容である。
筆者はある時期、大手外食チェーンのしまほっけ定食をよく食べた。自宅近くの店舗に行くと、現在の価格は1,000円(税込)である。
このチェーンは海外にも出店しているので、早速ニューヨークの価格を調べてみたところ、25ドル、ここでまず「うーん」となる。TEISHOKU SET(定食セット)には、ごはんと味噌汁に加え、小鉢のサラダ、漬物「homemade pickles」が付く。ちなみに鯖の塩焼きにすると価格は24ドルである。
ご飯は通常の白飯であればセット価格に含まれるが、五穀米やひじきご飯、とろろご飯などにすると2ドル追加である。トッピングの「いくら」の追加は5ドルだ。その後、ドレッシング(無料)を選び、物足りない場合は、枝豆(3ドル)、温泉卵(3ドル)、茶わん蒸し(6ドル)などを追加することができる。
現在のニューヨークでは、レストランで販売されている飲食物については市税4.5%、州税4.0%、これに大都市通勤輸送地区の割増しが0.375%加わり、合計で8.875%の税金がかかる。しまほっけ定食に五穀米とした場合、27ドル×8.875%≒2.40ドルの税金がかかり、合計では29.40ドルとなる。約30ドルだが、これで終わりではない。
ニューヨークは何年も訪問していないが、チップは15~20%くらいであろう。15%として4.5ドルなら、恐らく店を出る時は通常35ドルは覚悟することになる。1ドル=135円とすれば、4,725円だ。
そういえば、1980年代前半にブラジルで過ごしていた際、現地の食事がとにかく安く感じた。事実としても安かったのであろう。当時のブラジルの通貨(クルゼイロ)に対して最も強かったのは米ドルであり、タクシー料金などは米ドルで支払うと言えば大幅に値切ることが出来た時代である。
日本食が好きな米国人から見れば、本家日本のしまほっけ定食はニューヨークの5分の1の価格になる。コロナが落ち着き、インバウンド消費の伸びが期待されること自体は良いが、外国人の視点から見た日本は、素直に全てが安すぎるというのが本音であろう。それは筆者が1980年代にブラジルで体験したものの逆バージョンだ。しかし、当時も今も、現地通貨のみで生活している多くの人々にとって食費は極めて重要だ。
今朝のニュースでは卵価格の上昇が報道されていた。当たり前の事だが1kg当たり190円が374円(東京 Mサイズ)とわずか1年間でほぼ倍になれば一般消費者には溜息である。ところが、銘柄や育て方の違い、さらに輸送費などが加わるとはいえ、海の向こうでは1,200円でも行列が出来るという。中長期的な良し悪しは別として、そういうニーズと購買力があるところに出せばしっかりそれなりの価格で売れるという事だ。
賃金が上がらず物価が上昇すれば生活は厳しくなる。一方、飼料や燃料、さらに原材料費が上昇したまま販売価格が上げられなければ生産者は事業を継続できない。
さて、超長期で見た場合、代表的な飼料原料であるトウモロコシの価格は、1970年代前半までを第1期とすれば、その後は多少の変動はあったが2008年のリーマン・ショックまでが第2期、そして、それ以降の価格のステージは、明らかに違う次元で推移していることをよく理解しておく必要がある。これに過去最多の鳥インフルの影響がある。
つまり、今回の値上げには一時的な対策ではなく、中長期を見据えた抜本的な対策が必要だという事だ。
* *
しまほっけ定食が1,000円で食べられることを喜ぶべきか、悲しむべきか...
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米多収日本一 山口県のあぐりてらす阿知須 10a当たり863kg2025年3月3日
-
【特殊報】ナシ胴枯細菌病 県内で初めて発生を確認 島根県2025年3月3日
-
政府備蓄米売り渡し 入札 3月10日に実施 農水省2025年3月3日
-
新潟県の25年産米概算金「コシ2.3万円」 早期提示に歓迎の声 集荷競争、今年も激化か2025年3月3日
-
米の集荷数量 前年比23万t減に拡大 農水省2025年3月3日
-
米価高騰問題への視座【森島 賢・正義派の農政論】2025年3月3日
-
【次期家畜改良目標】低コスト、スマート農業重視 酪農は長命連産、肉牛は短期肥育2025年3月3日
-
【改正畜安法の現状と課題】需給対策拡大が焦点 問われる「国主導」2025年3月3日
-
あなたたちは強い〝武器〟を持っている JA全国青年大会での「青年の主張」「青年組織活動実績発表」講評 審査委員長・小松泰信さん2025年3月3日
-
JA農業経営コンサルタント 15人を認証 全中2025年3月3日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年3月3日
-
農業用バイオスティミュラント「エンビタ」とは 水稲育苗期にも効果 北興化学工業2025年3月3日
-
アミューズメント施設運営「ティスコ」株式を譲受 農林中金キャピタル2025年3月3日
-
「2025ローズポークおいしさまるごとキャンペーン」でプレゼント 茨城県銘柄豚振興会2025年3月3日
-
福岡ソフトバンクホークスとのオフィシャルスポンサー契約更新 デンカ2025年3月3日
-
ファーマーズ&キッズフェスタ2025 好天で多数の参加者 井関農機は農業機械体験2025年3月3日
-
【今川直人・農協の核心】産地化で役割が高まる農協の野菜取り扱い2025年3月3日
-
野菜がたっぷり食べられるカレー味「ケンミンカレー焼ビーフン」新発売2025年3月3日
-
第164回勉強会『海外市場での植物工場・施設園芸の展開』開催 植物工場研究会2025年3月3日
-
春の山梨の食材の魅力を伝えるマルシェ 5日から国分寺マルイで開催 雨風太陽2025年3月3日