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新卒者の離職者対策は「JAの一点集中!」で【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年5月9日

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若年者の離職率の高さの原因、その理由。

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次

ゴールデンウィークの連休明けの話題の一つが「五月病」だ。以前は、"新人の病い"のようにいわれていたが、最近は、中高年にも発症する例が多いとか。五月病は医学的な病名ではない。長い連休で、仕事に行くのが憂鬱な状態になるのは、新人ばかりではないという。転勤や人事異動での新しい職場や人間関係など、仕事環境の変化に馴染めない人が増えているということか。

現実には五月病はピンとこないという人も多い。使われるようになって50年以上も経過してる。それだけに、五月病で適応障害やうつで症状があるとすれば、速やかに医療機関を利用すべきだとの対応も定着しつつある。

先日、長くお付き合いしたJAの幹部職員との電話でのやり取りのなかで、新卒職員の退職者が以前よりも増えているが、有効な対策を講じているJAがあれば紹介してほしい、という話があった。さすがに、有効な対策を講じているJAは思いつかなかった。このテーマは、JAに限らず、ほとんどの企業が大きな関心事であり、悩ましい問題だ、と話した。

厚生労働省の「新規学卒就職者の就職後3年以内離職率」という調査がある。毎年行っているが、これをみると、深刻な事態が続いている。令和2年における入社3年以内の離職者は平均で3割を越える。大学卒の離職率は32.8%である。3人に1人は、3年以内に離職している。短大卒はもっと深刻で43.0%である。高校卒も39.5%と約4割だ。これが、全国の企業・組織の平均である。

このところ、新卒者の離職率は3割強から4割前後で推移している。15年ほど前までは、就職氷河期とされていた時期で離職率は低下したが、その後、上昇して、この10年はあまり変化していない。お付き合いしたほとんどのJAは、新卒職員の2割強から3割近くが3年以内に退職しているという話を聞いたから、他の業種より若干低いという印象をもっている。それが、上がってきているのだろうか。

"一点集中主義"の追求、「不満」と「不安」の解消策

そこで、新卒者の退職理由を厚労省の報告書で確認すると、入職前の説明と実際の労働条件とのギャップをあげている。それは、給与が高い、残業が少ない、福利厚生が整っている、有給が取れる、キャリアアップできる、など、実際とはあまりに違う、というのである。

加えて、業務の繁忙、営業目標管理のプレッシャーも。また、上司や先輩、同僚社員とのコミュニケーションがうまく取れない、人間関係を離職理由にあげる人も少なくない。ただし、この上司や先輩職員との人間関係をあげる離職者は、ほとんどが1年未満での退職だというから、要注意である。これらの退職理由、不満項目は、JAにもそのまま当てはまりそうである。

では、何から手をつければいいのか。どんな対策が有効か。私がアドバイスしてきたことを中心に紹介したい。それは、「一点集中主義から始めよ!」である。

厚労省の別の報告書に、離職率は業界・業種で大きく異なるとし、「サービス業でも離職率が1割を切る業種がある」に注目した。それは、インフラ系のサービス業。電気・水道・ガス事業などで、労働条件や給与、福利厚生など平均的に条件が良く、業務の自動化も進み、企業規模も比較的大きい。また、地元意識が強く、計画的な研修が可能で、キャリアプランにも取り組むケースが多い。若年層の離職理由の項目についての平均点が高いのである。

そこで、JAの対策だが、インフラ系企業のように、働く諸条件で平均点を上げることは、まず不可能だ。だが、周辺企業に負けない"絶対的な優位項目"を一つつくることはできる。そして、一つずつ増やしていくのである、意図的に、計画的に。

たとえば、給与を地域ナンバーワンにすることは難しい。でも、キャリアプランへの取組みが素晴らしい、職場の上司と一般社員に差がない働きやすい職場だ、など、おカネをかけなくても、「この地域ではJAが一番」という実態や評判は、役職員が努力すれば不可能ではない。そのアイデアとパワーを組織内で発揮する一体感をつくることである。

JAには、近隣の競合企業にない「強み」がある。おカネをかけずに、徹底的に取り組むテーマはあるはずだ。事業実績に直結するテーマは、たとえば、「JAが地域で一番のサービスと親身で相談力のある金融機関(保険会社)」である。何があれば、そう言われるかを計画的に取り組むことである。

地域社会の非組合員層にアピールする、具体的な「JAが一番」のキーフレーズ(キーワード)に徹底的にこだわること。非組合員層の目耳に届けるようと努力しない限り、利用の少ない組合員、ほとんど名ばかりの組合員へのメッセージにもならないのである。

もう一つは、JAは地元主義の事業体で、なおかつ生活インフラ事業を担っている。JAを利用している組合員の高い支持と感謝の声を集約し、地域社会に反射・拡大することである。自画自賛のポスターやPR誌の制作を薦めたい。

毎年、手垢のついた組合員・利用者対策や対前年比の事業伸長に右往左往しているだけでは、新規学卒者の離職率も下がらないばかりか、肝心な組合員も失ってしまうのではないのだろうか。

本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)より、『コラム名』を添えてご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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