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明石市が証した政治の不作為【小松泰信・地方の眼力】2023年5月10日

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5月4日、総務省統計局は4月1日現在における子どもの数(15歳未満人口)を推計し公表した。2022年から30万人少ない1435万人で、1982年から42年連続の減少で過去最少。総人口に占める子どもの割合も、75年の24.3%から49年連続の低下で、過去最低の11.5%。

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異次元の財源議論

毎日新聞(5月9日付)によれば、加藤勝信厚生労働相は7日、出演したテレビ番組で、「異次元の少子化対策」の財源について、医療や介護、年金など既存の社会保険料を財源とすることについて、「医療は医療に使う、年金は年金に使う。それぞれ目的と負担の関係で(制度を)作っている」ため、「例えば、医療に使うお金を子どもに持っていくっていうのは正直、余地はない」と、既存の社会保険料から賄うことを否定。その上で、少子化対策の財源確保のあり方について「どういうことを進めていくのか、よく議論させてもらいたい」と語った。

動き始める現場

西日本新聞(5月5日付)は、九州7県全233市町村の97%で、児童福祉費が5年前に比べて増加し、総額では1.4倍に上がるなど、子育て支援にかける予算が大幅に伸びていることを伝えている。幼児教育・保育の無償化などを国が進め、市町村の負担が増したことだけではなく、財源を捻出して独自策を打ち出す自治体もある。

ただ、九州の全市町村の15歳未満人口は22年1月時点において計約167万人で17年1月から5%減。子どもが増えた自治体は九州全体の1割程度の27市町村にとどまり、その多くは利便性の高い都市圏であることから、「全体としては少子化の流れに歯止めがかかっていない」としている。

明石市の子育て政策

九州の4紙(西日本新聞、熊本日日新聞、南日本新聞、宮崎日日新聞)は、連携企画で子育て先進自治体として全国的に注目されている兵庫県明石市の実態に迫っている。

熊本日日新聞(5月5日付)の企画記事の要点を、次のように整序する。

記事は、「4月25日朝、明石市内の住宅街にハート柄の模様がある小型トラックが現れた。ピンクのジャンパー姿の『見守り支援員』はおむつを手に、乳児を抱っこした母親とあいさつをかわす」から始まる。支援員の手にあるおむつは、「おむつ定期便」として生後3カ月から1歳まで毎月無料で育児用品といっしょに子育て世帯に届けられる。

明石市の子育て政策を強力に推進したのは、今年4月末で引退した泉房穂(ふさほ)前市長。

2013年、1期目だった泉氏は中学3年生までの子ども医療費を無料化したのを皮切りに、子育て施策を充実させていく。

①子ども医療費(現在は高校3年生まで)、②おむつ(満1歳まで)、③第2子以降の保育料(副食費を含む)、④中学校の給食費、⑤文化博物館など公共施設4カ所の入場料、これらが市独自の「5つの無料化」。さらに注目しなければならないのが、「すべての子どもたちをまちのみんなで本気で応援する」方針から、所得制限を設けていないことである。

児童福祉費だけでも21年度が約297億円で、泉氏就任前の10年度から約2.4倍に増えた。

そのための予算を捻出するために取り組んだのが予算の振り替え。予算額の大きかった土木費は21年度までの約10年間で半減。高齢化などで居住密度が下がった市営住宅は集約化。正職員数を減らしつつ、全国公募で福祉専門職を任用して業務の質を維持しながら、総人件費を年10億円削減。しかし、子育て施策の充実で子育て世代と税収が増え、好循環が生み出された。

1990年代後半から人口の減少傾向が続き、2010年以降は約29万人と横ばいだったが、その後は25から39歳の子育て世代を中心に伸び続け、4月1日現在約30.5万人。それに伴い市民税など主要な税収が12年度から30億円ほど増えたそうだ。

「子どもの未来」は「社会の未来」

DIAMOND online(2月2日)において、泉氏は「5つの無料化」について、「これらはすべて全国初です。ただ実は、ほとんどが日本以外の他の国ではあたりまえのように実施されている施策です。私たちの社会には、グローバルスタンダードから見て明らかに凹んでいる部分がある。だから、今の時代に必要な施策を『遅すぎてごめんなさい』との気持ちで、必死で提供しているだけなのです。(中略)こんなことが全国初になるなんて、日本がどうかしているだけなのです。伝えたいのは、日本だけが、いかにこれまで『何もしてこなかったか』という残念な事実、冷たい社会への憤りです」と語り、「せめてベーシックな子育て施策くらいは、国が全国一律で実施すべきだ」と訴える。

なぜなら、「『子どもの未来』は『社会の未来』そのもの」だから。「自分たちのまちが『暮らし続けられるまち』であるために、未来を担う子どもたちを今の社会のみんなで応援する。みんなの税金で、まちのみんなで、すべての子どもを応援する。当然のことです。『子育て世代だけ優遇しやがって』みたいな目先の話ではありません。子ども施策は、みんなに必要な施策、ある意味『未来施策』なのです」には、グッときて膝をたたく。

「支援は『企業』からではなく『子ども』から始める。『子ども施策』は『経済施策』です。子どもを本気で応援すれば、市民の側からお金は回り始めます。人も集まる。まちが賑わう。子どもにやさしいまちは、みんなにやさしいまちになる。子どもたちはまちの将来を担うので、結果としてみんなを支える。みんなが暮らしやすいまちとなるのです」にはコメント無用。

「不平等の再生産」を断ち切るのは大人の責任

熊本日日新聞(5月5日付)の社説も、「学びも経験も人間関係も、豊かな家の子はより豊かになり、貧しい家の子は貧しいまま。貧困の連鎖とは、『不平等の再生産』にほかならない。子どもがそれぞれの人生を輝かせるためには、進む道を自ら選ぶことができる『機会の平等』が必要だ。可能性が開かれていなければ、未来へ希望を持つのは難しいのではないか」とズバリの指摘。

さらに、「格差社会をつくってきた責任は大人にある」と指弾する。そして、岸田政権の「異次元の少子化対策」に矛先を向け、「子どもが『幸せ』を感じられる社会は、誰にとっても生きやすい社会であるはずだ」として、子どもの生活の「質」向上に資する政策を求めている。

今頃になって財源問題を議論するような政治家たち! 無いのは財源ではなく、お前たちのやる気と責任感!

「地方の眼力」なめんなよ

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