「来年も咲きますか?」母の日の鉢植えカーネーション【花づくりの現場から 宇田明】第9回2023年5月18日
5月の第2日曜日は母の日、今年は最もおそい5月14日でした。
この日は1年で一番花が売れる日で、もちろん主役はカーネーション。切り花だけでなく鉢ものも喜ばれます。
鉢ものカーネーションで、花店の店員さんが、お客さまから一番受けたくない質問、「来年も咲きますか?」
これは植物の知識がある人ほど答えにくい。
植物学的に答えるなら、「カーネーションは宿根草ですから、来年も花が咲きます」
現実には、株は生きつづけても、買ったときのようなきれいな花を咲かせるのはむずかしい。
高温多湿の梅雨、猛暑の夏、冬の低温、立ち枯れ病やダニ、スリップスなどの病虫害、水・肥料の過不足による生育不良などのハードルをクリアーし、花をきれいに咲かせるのは至難のワザ。
このことを、母の日の書き入れ時の花店で、お客さまに丁寧に説明することは困難です。しかもパート、アルバイトの店員さんが説明しようとしたら、パニックになるでしょう。
そもそも消費者は鉢ものに、なにを求めているのでしょうか?
花のヘビーユーザーである園芸マニアにとって、鉢ものは「育てる」ものです。育てる園芸は日本の伝統文化といえます。
当然、生産者も消費者が適切に育ててくれることを前提に鉢ものを生産しています。
しかし、育てることを楽しむ園芸マニアは、いまでは少数派。
マニアだけを対象にしていたら、消費は先細りするだけです。
多くの消費者、とくに若い世代が求めるような商品を提供しなければ、消費の拡大はのぞめません。
若い世代にとっての鉢ものは育てるものではなく、単にグリーンインテリアであり、カーネーションやシクラメンなどの花が咲く鉢ものは「根がついた切り花」です。
そして花が終われば、切り花のようにあっさりと捨てることができます。
このように、消費者の鉢ものに対する意識が変化しているのに、生産者はあいかわらずマニアを想定した商品だけをつくり続けています。
その結果、育てる、手入れをしてくれることを前提に生産している生産者と、捨てることを前提に購入する消費者とのミスマッチが生まれています。
このミスマッチを解消するためには花業界の意識改革が必要です。
花鉢を、「根がついた切り花であり、花が終われば廃棄するもの」と考えて、生産すべきです。
まず土の価値観を変えましょう。
農業の基本は土づくりであり、有機物に富む肥えた土では農作物がよく育ちます。
これは生産者の価値観で、鉢ものを買ったお客さまには迷惑でしかありません。
なぜなら、消費者がもっとも嫌うのが虫です。とくに鉢の土から発生するコバエは嫌われもの。
なにか悪さをするわけではありませんが、存在自身がうっとおしく、うるさい。
そんなコバエがわく鉢ものではキッチンやリビングに置いてもらえません。
さらに、都会では土を捨てるのに苦労しています。
消費者の意識と環境の変化に対応するためには、鉢ものの土は植物がよく育つことより、コバエなどの虫が発生しないことや、燃えるごみとして捨てられることを優先しなければなりません。
それにはピートモス、ヤシ殻、パーライトなどの清潔な人工培土が適しています。
おなじように、鉢と支柱も燃えるごみとして廃棄できる素材にします。
生産者の役割は、生産者の価値観を消費者に押しつけるのではなく、消費者が求める商品を提供することです。
それが消費拡大の最初の一歩です。
「来年も咲きますか?」
「花が咲き終わったら、鉢ごと燃えるごみとして捨ててください」
重要な記事
最新の記事
-
コスト考慮した価格形成 関係者に努力義務 不十分なら勧告・公表 農水省2025年2月10日
-
農林中金 純損失1兆4000億円 第3四半期決算2025年2月10日
-
【田代洋一・協同の現場を歩く】山形・農事組合法人魁 助成金頼り後継不安 ソバ転作で水田守る2025年2月10日
-
日本カーリング選手権 男女日本代表チームに副賞の米など贈呈 JA開催2025年2月10日
-
「佐賀牛×Art Beef Gallery 佐賀牛ローススライス「ベルサイユのさが」限定パッケージ」販売 JAタウン2025年2月10日
-
フェアな値段を考える「値段のないスーパーマーケット」開店 農水省2025年2月10日
-
南海トラフ地震に備え炊き出し訓練「あったかごはん食堂」開催 生活クラブ愛知2025年2月10日
-
完熟きんかん「たまたま」&日向夏「宮崎ひなたフルーツフェア2025」開催中2025年2月10日
-
JAと連携 沖縄黒糖と北海道小麦の協同「産直小麦の黒かりんとう」発売 パルシステム2025年2月10日
-
牛乳の魅力発信「牛乳って、いいな。動画コンテスト」を初開催 関東生乳販売農業協同組合連合会2025年2月10日
-
福島県産食材を活用 YouTubeチャンネル「ふくしま給食ものがたり」公開2025年2月10日
-
季節限定「とびきり大粒ヨーグルト 白桃&アロエ」新発売 北海道乳業2025年2月10日
-
福島のトップブランド米「福、笑い」食味コンテスト 受賞者決定2025年2月10日
-
国産の桃の果汁そのまま「国産白桃ストレートジュース」デビュー 生活クラブ2025年2月10日
-
地産全消「野菜生活100 本日の逸品 愛媛せとか&伊予柑ミックス」新発売 カゴメ2025年2月10日
-
「女性のための就農お悩み解決セミナー」24日に開催 埼玉県2025年2月10日
-
「ACAP消費者志向活動表彰」移動スーパー「とくし丸」が消費者志向活動章を受賞2025年2月10日
-
寺田心とインフルエンサーも登場 ミルクランド北海道 新CM第2弾公開 ホクレン2025年2月10日
-
山口県内初のコメリパワー「長門店」23日に新規開店2025年2月10日
-
【人事異動】JA三井リース(4月1日付)2025年2月10日