親NATO諸国の日没は8年2か月後【森島 賢・正義派の農政論】2023年5月22日
ウクライナ紛争は、一刻も早く終結させねばならない。しかし、その終結が見えてこない。まだまだ続くようだ。そして犠牲者が増え続ける。
その間に、一方の事実上の当事者であるNATO軍が、武力の源泉にしている経済力は衰えていく。それに代わって、非NATOの国々の経済は成長していく。そして、非NATOの国々が、親NATOの国々へ向ける目は、時が経つにつれて、次第に険しくなっていくだろう。
日本は、親NATOの側に立っていて、非NATOの側から怨嗟の目で見られている。
上の図は、親NATO諸国と非NATO諸国との経済力の推移を、比較したものである。
親NATO諸国とは、米欧などのATO加盟国、および日本などのNATOのグローバル・パートナーといわれる国々である。非NATO諸国とは、それ以外の全ての国々である。
それぞれの国々のGDPを合計して、両者を比較したものが上の図である。期間は1980年から2040年までである。
2024年までは、IMF(国際通貨基金)の推計値を使い、それ以後の2040年までは、IMFが予測した2023年の成長率、つまり、2023年の瞬間風速の風が、今後も吹き続けると仮定して推計したものである。GDPの単位は、UN(国連)が推計した2021年基準の実質USドルである。
◇
この図で、非NATO諸国のGDPを見てみよう。2040年には2020年の約2倍になると予測できる。
つぎに、非NATO諸国のGDPを、全世界のGDPに占める割合でみよう。1980、81年は25%だった。それしかなかった。
しかし、その後の非NATO諸国の経済をみると、2009年にはリーマン・ショックがあったが、ほとんど影響なく乗り越えられた。2020年からコロナ禍があったが、その影響も比較的軽微だった。そして、非NATO諸国のGDPが全世界のGDPに占める割合は、2030年には49%になり、2040年には50%を超えて56%になると予測される。
◇
詳しく見ると、非NATO諸国のGDPが全世界のGDPの50%を超えるのは、2031年6月28日である。つまり、今から8年2か月後である。この日から、非NATO諸国のGDPは、親NATO諸国のGDPよりも多くなる。親NATO諸国は、この日に落日を迎えることになる。
これは、親NATO諸国にとって由々しき事態である。親NATO諸国は焦燥に駆られている。
◇
経済規模が逆転する原因は、文明の土台になる古い生産構造の弱体化である。古くて弱い生産構造が、新しくて力強い生産構造に交代する。そして、そこに基礎をもつ文明も交代する。
古い文明は世界の舞台の上で、高ころびに、あをのけに転び、新しい文明が颯爽と登場する。その日は近い。8年2か月後に迫っている。
◇
その日を境にして、親NATOの側に立つ米欧が勝手に作り、勝手に解釈し、勝手に武力で強制した自由と民主主義が去る。日本は、米欧と共に没落の一途を辿る。
それに代わって、非NATOの側に立つ中国やインドや南アフリカやブラジルなどの、アジアやアフリカや中南米の自由と民主主義が台頭する。
それは、植民地時代の非暴力・無抵抗ではなく、軍事力という暴力を否定する非暴力と、しかし、無抵抗ではなく言論による抵抗を活発にする。そして、新しい自由と民主主義が世界を覆う。
◇
日本はどうか。日本はアジアにありながら、アジアに背を向け、親NATOの米欧の側に立って、米欧とともに没落の坂をころげ落ちる。
それでいいのか。それを食い止めようとする社会勢力はない。そういう政党もない。だからアジアの隣国に白眼視されながら、哀れに没落するしかない。夕暮れの中を彷徨するしかない。
それでいいのか。
◇
昨日まで、広島でG7の首脳会合があったが、この会合は、ウクライナでの紛争を一刻も早く終結させる、という会合ではなかった。
そうではなくて、そこで決められたことは、ウクライナへの軍事支援を強化することだった。つまり、火に油を注ぐための会合だった。
多くの人たちが期待していたのは、そんなことではない。せめて一時的でもいいから、戦争状態を凍結させるための休戦の提案だった。一刻も早く休戦して、戦争を終結させるための平和条約交渉に、知恵を出し合うことを期待した。そうして、明日から戦争犠牲者を出さないことを期待した。だが、無残に裏切られた。
日本は議長国だったが、世界に誇る平和憲法を持ちながら、平和都市の広島で、平和の役割を放棄した。
(2023.05.22)
(前回 日本の低賃金は労働運動の低迷が原因だ)
(前々回 文明の交代は近い)
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