消費者は花をどこで買っているか?【花づくりの現場から 宇田明】第10回2023年6月1日
消費者は花をどこで買っているのでしょうか?
「花は花屋」が当たり前ではなくなりました。
スーパーで買うのが当たり前の野菜に一歩近づきました。
総務省の家計構造調査は、5年ごとに消費者の購買行動を調べています。
その調査では、1994年には71%の消費者(二人以上世帯)が切り花を一般小売店(以下、花屋)で買い、スーパー(生協・購買、ディスカウントストア・量販、コンビニを含む)は16%にすぎませんでした(図)。
その後、花屋は右肩下がり、直近の調査の2019年には34%にまで減りました。一方スーパーは39%に増え、ついに両者が逆転しました。
野菜では、スーパーが86%で一般小売店(以下、八百屋)は7%にすぎません(2019年)。
最近そうなったのではなく、1994年時点でもすでに八百屋は21%しかなく、65%はスーパーで買っていました。
八百屋は、大型スーパーが進出してきた1970年代の高度成長期には街から姿を消しはじめていたのです。
では、花屋も八百屋のような絶滅危惧種なのでしょうか。
花屋はなくなりません。
花屋は八百屋とちがい、店頭小売だけでなく、スーパーにできない(今のところは)仕事をしているからです。
それは業務需要です。
業務需要とは、結婚式の装飾や新婦のブライダルブーケ、葬儀の祭壇や供花、新装開店の花輪、イベント、ホテル、レストランなどの装飾、ギフトの花束制作などであり、技術をもった花屋でしかできない仕事です。
また母の日や誕生日などのお祝いの花や、法事などのお悔やみの花を贈るには、花キューピットなど全国の花屋組織の通信配達ネット―ワークが大きなシェアを占めています。
これら業務需要には生け花やフラワーデザインの技術や経験が必要です。
したがって花屋は小売業であるとともに、デザイナーであり、技術者でもあります。
スーパーは、家庭用のパック花(スリーブに入れた数本の花束)を野菜などとおなじように無人販売しています。
このように、花屋は業務需要主体、スーパーはホームユース主体ですみ分けができています。
その花屋がおもに担っている業務需要は、結婚披露宴や葬儀などの簡素化と法人の経費削減などの影響で減っています。
反対に、ホームユースが拡大し、それらは野菜など食品のついでにスーパーで買う時代になりつつあります。
このような消費者の購入先の変化に生産者は対応できていません。
というよりも対応したくないのです。
それは花屋とスーパーでは、求める品質と価格がちがうからです。
花屋は業務需要で高品質・高単価、スーパーはホームユースでコンパクト規格・お手頃価格を求めています。
それにもかかわらず、生産者は花屋向けの高品質・高単価の一本足打法。
その背景にあるのは生産者のプライドです。
高品質な花をつくり、品評会で大臣賞、知事賞をとり、市場では最高値で取引されることが生産者の誇り。
有名花店の店頭を飾り、高級ホテルの結婚式で装飾やブライダルブーケに使ってもらいたい。
スーパーのパック花、無人販売なんてとんでもない。
まるで世の中の変化に取り残された名人気質の職人のようです。
花生産者の経営が悪くなったのは、高品質・高単価の業務需要が減ったからです。
マーケットが小さくなったのに、すべての生産者が目標にするから、高品質なのに高単価がとれず、経営が悪化。
ホームユースという大きなマーケットが育ちつつあるのに、生産者は無視したままです。
まず、「業務需要の花をつくる生産者は一流、ホームユースの花をつくる生産者は二流」という、まちがったプライドはすてましょう。
農業は「つくってなんぼ」ではなく、「売れてなんぼ」。
売るためには消費(者)の変化に対応しなければなりません。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(133)-改正食料・農業・農村基本法(19)-2025年3月15日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(50)【防除学習帖】第289回2025年3月15日
-
農薬の正しい使い方(23)【今さら聞けない営農情報】第289回2025年3月15日
-
イタリア旅行の穴場【イタリア通信】2025年3月15日
-
政府備蓄米 初回9割落札 60kg2万1217円 3月末にも店頭へ2025年3月14日
-
【人事異動】JA全共連(4月1日付)2025年3月14日
-
【人事異動】JA全中(4月1日付)2025年3月14日
-
(426)「豆腐バー」の教訓【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月14日
-
実需者と結びつきある飼料用米 支援継続を 日本農業法人協会2025年3月14日
-
オホーツクの恵み 完熟カボチャからフレークとパウダー JAサロマ2025年3月14日
-
日本一の産地の玉ねぎがせんべいに 産地の想い届ける一品 JAきたみらい(北海道)2025年3月14日
-
みおしずくがクッキーに 日野菜漬はふりかけに JAグリーン近江(滋賀県)2025年3月14日
-
地域の歴史受け継ぎ名峰・富士の恵み味わう かがり火大月みそ JAクレイン(山梨県)2025年3月14日
-
【人事異動】JA全厚連(4月1日付)2025年3月14日
-
高まるバイオスティミュラント普及への期待 生産者への広報活動を強化 日本バイオスティミュラント協議会2025年3月14日
-
岩手県大船渡市大規模火災での共済金手続きを簡素化 JA共済連2025年3月14日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第107回2025年3月14日
-
3月14日は「蚕糸の日」 大日本蚕糸会2025年3月14日
-
種苗・農産物輸出の拡大に向けた植物検疫のボトルネック解消「農研植物病院」へ出資 アグリビジネス投資育成2025年3月14日
-
【役員人事】農中信託銀行(4月1日付)2025年3月14日