シンとんぼ(46)食の安全とは(4)毒性についての理解2023年6月3日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。最初に「毒性とは何か」をテーマにすえて、前々回より毒性の話を開始した。前回は「医薬品は毒性の強い物質であっても人の病気を癒す薬になるから禁止しようとはならないが、農薬の場合は毒だから禁止しようとなる。」とその矛盾を感じると述べた。
実際に、農薬の有効成分と全く同じ成分が医薬品や家庭用の衛生害虫防除剤に使われていたりしており、一つの同じ化合物が一方では医薬として扱われて有難がられているのに、それが農業用に使われると「毒」として嫌われるといったことがまかり通っているのだ。
同じ物質なのに、使用用途によってこれだけ扱いが異なるのはおかしいと思うのだが如何だろうか?
ではどうしてこういうことが起こるのだろうか? その理由は、この毒性ということの意味がきちんと理解されていないことに尽きるのではなかろうかと思う。世の中には、かび毒・ふぐ毒といった天然毒や、一部の医薬品や紙巻タバコなど、農薬よりも毒性の強いものが多数存在している。これは紛れもない事実である。しかし、医薬品や紙巻タバコの場合は、病気の症状を緩和してくれたり、気持ちを落ち着かせてくれるといった解りやすいメリットがあるので、用法・用量を守って正しく使いましょうとなるが、農薬の場合は、虫や菌や草を殺すことができるので、毒に違いなく危険だから使うな!となる。農薬には、農作物の生産性・品質を向上し、労力を軽減する立派な役割や利点があり、安定した食料供給に貢献しているにも関わらずこの扱いである。この農薬のメリット自体が一般には「実感しづらい」ことが農薬のメリットを理解してもらえない大きな要因ではなかろうか? そのためだろうか、農薬の場合は用法・用量を守れば安全であるという概念は世間一般的には浸透しづらいことのようだ。
繰り返しになるが、農薬はそれこそ沢山の費用と時間をかけて、これでもかといわれるほど試験した上で使用方法が決められており、使用基準を守って使用することで農作物の安全性は十二分に担保されているのは間違いない。農薬の影響を受ける昆虫の立場でいうのも変だが、これは事実である。どうもこれらが正しく理解されていない、農薬反対派の方々は理解しようともしない。
世間一般が農薬のことを正しく理解してくれるようになるには、国も含めた農業関係者が機会あるごとに消費者に対して、地道に正しく伝え続けるしかないのだろうと思うが、本当は農水省や厚労省が率先してやってくれるともっといい方向に進むと思うのだが、現体制では無理だろうな。せめて、一方の考えに偏ることなく公平に対処してくれるようになるだけでもいいのだがとシンとんぼは思っている。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日