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協同組織にふさわしい職員を育て、職場づくりを!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年6月6日

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協同組合は人の組織、なぜ、職員を信じ、能力を活かそうとしない?

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次

民間企業や行政組織などの調査やコンサルが約120社・組織、JAのコンサルが107組合。40年近くの実績だが、企業や行政機関と比較して、JAの最大の特徴は、教育・研修の機会と時間の量が比較にならないくらい多い点である。

中央会の新人研修、階層別研修などに加え、各連合会が行う業務研修、加えて、民間の研修の受講や通信教育の活用など、JA職員の学習機会はとても多様で恵まれている。それも全額JA持ちのところが多い。相応に評価される職員が育っているため、5年も経過すると、他の業界から引き抜かれたり、若年退職が生まれるのかもしれない。

以前から、私のJAへの提案はこうだ。これまではJAサイドのニーズ(要請)で職員管理や教育・育成を行ってきたが、そろそろ職員の資質や特性を活かす、職員の立場で人づくりや教育研修を考える体制を導入すべきではないか、というもの。型にはまった人づくりは、職員の理解は得られない。特に最近の若い職員は難しいはずだ。

コンサルで、JAの支店や事業店舗に入り、ヒアリングや話合い、研修などを行っていると、職員の育成を上部組織に任せる体制が長く続いたことの弊害が生じている。JA内部で職員の能力開発や組織開発が行われないために、事業活動の前例踏襲、固定化が生じ、工夫や改革がないことだ事業低迷につながり、肝心な組合員接点の希薄化の一因ともなっている、と考えられるのである。

とはいえ、一コンサルが口を挟むことではないと考え、できる範囲で、やれることを考え、努力してきた。コンサル先の若手中堅職員のビジネス研修は、その一例である。協同組合教育とビジネス教育は一体で進めるべき、との思いからだ。これまでは、若い職員向けの研修は、業務研修ばかりで、ビジネス思考やビジネスツール・フレームワークなどの研修はまったくスルーされている。

上部組織の事業別業務研修が、事業推進のための研修のような印象が強く、職員の柔軟な思考や気づきを引出し、前向きで行動的な職員を育てることよりも、商品・業務知識を詰め込む、いわゆる営業兵の研修のようである。

中途採用で職場内の"人の流動性"を創り出す

こうしたJAの人づくりが長い時間続いたことで、組織の流動性や人材の流動性が進まない要因となり、社会の変化や環境の変化への適応・対応力の低下、組織・事業のイノベーションへのパワーの衰弱に通じているように思える。

そこで、コンサルを行うJAには、中途採用の検討を提案してきた。なぜなら、新卒者を定期採用し、複数の事業に精通する職員のために、多事業の研修機会を提供し、定期異動をしやすくする。長期的には、終身雇用と定型的な職員管理を行う。この考え方を見直す時期ではないか。創発的な組織への変革は、職員の流動化が必要だからである。

実際、あるコンサルJAで、数年間に10人以上の中途採用を行った。中途採用は、その職員にフォーカスし、特性や能力に注目せざるを得ない。職員の評価や行動に目を向けるようになる。結果的に、中途採用の成果は大きかった。JAのプロパー職員への刺激があり、支店などの現場組織でのお客さま対応や事業推進方法などの変化、定期ミーティングの開催などの影響のほか、目標や事業推進方法の改善にも及んだ。

これまでのJAの人づくりの問題や課題の整理、教育研修の定型化、マンネリ化などにともなう組織の階層化、硬直的な構造化が生じていることが、臨機応変で自由闊達な職場への変革を遅らせているのではないか。

職員の特性や能力を活かす「人づくり」は、なぜできない?

20年ほど前から、コンサルの契約で伺うことになったJAでの役職員との懇談で、必ず話題に上がるのが、職員の資質、退職、教育問題である。なかでも、教育研修については、費やす時間も金額も多く、受講する職員本人と職場の周囲の負担の大きさは並大抵ではない。上部組織に任せっきりだったことへのJAの反省もあるが、何とか改革を急ぎたい、という思いは強い。民間の企業の例や行政の事例をお話しするが、なかなか実行するには勇気がいるようだ。

長く続きすぎた職員の資格認証制度のような仕組みは、JAの現場を知らなすぎるか、JAの悩みや問題を聞く耳を持っていないこと、JAグループの組織の大再編も含め、長らく続いたJAグループ組織の劣化の進行を真摯に認識すべきではないか。

JAの関係者には耳の痛い話かもしれない。しかし、個々のJAにとっては、将来への不安を増幅し、事業実績や経営の実情に悩み、打つ手をこまぬいている。ましてや、組合員やお客さまと接点をもつ現場の支店や事業所などの店舗は、昨日と同じ仕事を繰り返す変化のない職員が対応する。その影響は、利用者数の減少に表れている。

このような話を聞くにつけ、上部組織の努力不足を感じる。組織の段階や枠を飛び越えて、実情を把握し、速やかな対応と長期的な方策を検討してほしい。職員の問題は喫緊のテーマで、個々のJAには手に負えないものが多い。このままでは、5年先のJAの事業計画はできるかもしれないが、残念ながら、それを担うJAの職員や職場の姿が描けない。

※5月30日の本コラムに問合せがあり、JAの現場マネージャーを対象にした当社のオリジナルのマーケティング入門テキスト(「JAの実践マーケティング論」(50頁)を送りました。希望者にお送りします。自己学習にも活用できます。下記の問合せフォームからどうぞ。

本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)より、『コラム名』を添えてご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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