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堂々とブリンケンの後塵を拝せよ【小松泰信・地方の眼力】2023年6月21日

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6月19日、米国のブリンケン国務長官が北京を訪問し、中国の習近平国家主席、秦剛国務委員兼外相、王毅共産党政治局員と相次いで会談した。米国国務長官の訪中は約5年ぶりで、バイデン政権発足後、閣僚の訪問は初めて。

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他人事論評の全国紙

全国紙(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞、産経新聞)の社説・主張の論評に大きな違いはなかった。要点は次の3点。

(1)米中両国が危機管理の重要性を直接確認したことを歓迎し、対話の継続を求めている。例えば、「国際課題の解決に共に責任を負うべき二つの大国がいがみ合い、衝突の懸念すら取りざたされる。この危うい状況から脱する第一歩とすべきである」(朝日新聞、6月20日付)、「ほぼ5年ぶりに米国務長官の訪中が実現したのは評価したい」(日経新聞、6月21日付)など。

(2)米中2国間の緊張関係において、程度の差はあるが、中国側に責任の多くがある、という姿勢が明らかである。例えば、「米中関係の改善を阻害している要因は、台湾に対する軍事的威嚇のような、中国の一方的な言動にある。習近平政権はそのことを認識し、自制する必要がある」(読売新聞、6月20日付)、「独裁者である習氏が柔軟な姿勢を示したとして、関係改善が進むと期待する向きがあるとすれば早計だ。米側が強く求めた国防当局間の対話に、習政権が応じなかったからである。(中略)これでは米国はじめ国際社会の信頼は得られまい。不測の事態を防ぐボールは習氏の側にある」(産経新聞、6月21日付)など。

(3)総じて他人事のように論評し、わが国がどう関わるべきかについてまったく言及していない。

全国紙の社説・主張を読み最も驚いたのがこの3点目。しかし複数の地方紙は、この点に言及している。

日本政府に外交努力を求める地方紙

琉球新報(6月21日付)は、「中国の軍拡が国民の目に脅威と映っていることは事実だが、米軍と自衛隊の一体化や増強で対抗することが国民の不安を払拭するとは思えない。ブリンケン氏と会談した王氏は『中国脅威論』がたきつけられることへの不快感も示した」ことから、「外交努力による緊張緩和こそ、国民の不安を拭い去り、中国との信頼関係にもつながる」として、外交努力の必要性を説く。

信濃毎日新聞(6月21日付)は、「両国間の対話がない状況で偶発的に衝突すれば、本格的な軍事衝突に発展しかねない。世界の安全保障や経済などに極めて大きな影響を与える」として、「両国の責任」は「対立を避けること」とする。

その上で、「ウクライナ戦争の停戦や終結に向けても、ロシアと関係の深い中国の役割は大きい」ことから、「欧米や日本は中国と協調する方向で対話の道を探っていくべきだ」とする。

西日本新聞(6月21日付)は、「最近の南シナ海や台湾海峡における中国軍の挑発行為は目に余る」と、中国に強く自制を求める一方で、「他方、バイデン政権は中国に対話を求めながらも、安全保障や半導体規制などでは中国包囲網を強める動きを見せている。(中略)米国は、こうした状況が中国を刺激していることを自覚しなければなるまい」と、両国の問題点を指摘し、「米国の方針に追従するばかりではなく、隣国として中国への働きかけに努めてほしい」と、日本政府に訴える。

日中友好議員連盟の動きに希望

腰の重い政府を尻目に、自民党の二階俊博元幹事長を団長とする超党派の日中友好議員連盟が今夏訪中することを「倉重篤郎のニュース最前線」(「サンデー毎日」7月2・9日号)が伝えている。同議連の会長は二階氏。副会長が、立憲民主党の岡田克也、海江田万里、公明党の北側一雄、共産党の志位和夫、国民民主党の古川元久、社民党の福島みずほ、の6氏。

鍵を握るのは、超党派議連の対中政策における最大公約数だが、倉重氏は「今回その最大公約数探しに挑戦したのが志位共産党であった、というのが面白い」と注目する。

最大公約数を公式的に文章化しているのが、『日中両国関係の前向きの打開のために-日本共産党の提言』(3月30日)。

そこには、1972年の田中角栄・周恩来の日中共同声明以降半世紀にわたり両国間で交わされた文書、宣言、条約などから、次の3つの最大公約数が整序されている。

(1)「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した」(2008年5月7日の日中共同声明)

(2)「双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで一致した」(2014年11月7日の両政府間合意)

(3)「東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国」と「東アジアサミット(EAS);日本・中国・米国・韓国・ロシア・オーストラリア・ニュージーランド・インドの8カ国」を、地域の平和の枠組みとして発展させ、東アジア規模の友好協力条約を展望する「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)に日中両国が賛成している。

記事は、最大公約数を軸に、議連の訪中をめぐって志位和夫氏と田原総一朗氏(ジャーナリスト)の対談で深掘りされている。

注目した田原氏の発言は次の通り。

「僕も6月5日岸田さんに会って、習近平と会談しろと言ってきた」「米中両国とも本音では戦争をしたくない」「日本は今こそ米中間の仲介外交をすべきだ」「二階さんにもやる気がある。僕も賛成だ」「ぜひ頑張って実現してほしい」

北朝鮮にも行かせなさい

同「サンデー毎日」には、もう一つ興味深い記事があった。

「膠着状態だった日朝関係が、ざわざわとし始めた。きっかけは5月27日、岸田文雄首相が北朝鮮による拉致問題の『国民大集会』で行ったあいさつだ」で始まるもの。

ここで首相は、「条件を付けず、金正恩(朝鮮労働党総書記)氏と直接向き合う決意だ」と首脳会談を呼びかけたそうだ。

すると、同29日、朝鮮中央通信が北朝鮮外務省のパク・サンギル外務次官の「日朝両国が互いに会うことができない理由はないというのが共和国(北朝鮮)の立場だ」との談話を伝えたとのこと。

記事は、「核やミサイルの危機に直面する日本にとっては、北朝鮮とは少なくとも話ができる関係にしておいたほうがいい。岸田首相は今後、行動に示すことができるか」で締めている。

有言実行、言ったことをやらせるように世論形成に尽力するのもジャーナリズムの仕事。行動に示させなさい。
「地方の眼力」なめんなよ

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