シンとんぼ(49)食の安全とは(7)農薬成分で比較する2023年6月24日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。現在、「毒性とは何か」をテーマにすえており、ここのところ、毒性を科学的にとらえて身近なものと比較しながら毒性を考えている。前回、経口急性毒性を比較すると、「砂糖は食品だけどちゃんと毒性があり、普通に口にするカフェインは医薬品のアスピリンより毒性が強い」という例を示した。今回は一般的な農薬成分で比較してみよう。
前回と同じく、一般的な農薬のラットで測定された急性経口毒性LD50(mg/kg)を調べてみた。すると、殺虫剤のダイアジノン(商品名:ダイアジノン)が250、MEP(同:スミチオン)が330、殺菌剤のイソプロチオラン(同:フジワン)が1,200、ベノミル(同:ベンレート)が5,000以上、除草剤のグリホサート(ラウンドアップ)が5,000以上であった。
以上をもとに、前回と今回登場したものを毒性が強い順(LD50が小さい順)に並べてみると、ニコチン50>カフェイン200>ダイアジノン250>MEP330>アスピリン(医薬品)1,000>イソプロチオラン1,200>食塩3,000>ベノミル5,000=グリホサート5,000>エチルアルコール7,000>砂糖29,700となる。
整理すると、殺虫剤のダイアジノンやスミチオンは、普段コーヒー等で摂取するカフェインとほぼ同程度かやや毒性が弱く、殺菌剤のベンレートや除草剤のラウンドアップにいたっては、食品であり人体に欠かすことのできない食塩よりも1.7倍も毒性が弱いことになる。これらはごく一部の事例ではあるのだが、これだけでも「全ての物質には毒性を有しており、毒性は有るか無しかではなく、強いか弱いかで判断すべきものである」ということが分かって頂けるのではないかと思う。それでも、「農薬は毒だから使うな!」という方々の理論からすれば、カフェインや医薬のアスピリン、お酒、砂糖も毒性があるので使うなということになるのだろうか?
もちろん、この比較は急性毒性で行っているので、発がん性や繁殖毒性などでも同じ傾向になるかどうかはわからない。ただ言えることは、現在、国から登録認可を受けている農薬は、発がん性や繁殖毒性試験など全ての毒性試験をクリアしたものであり、毒性に疑いのある成分は登録認可されていない事実を考えると、現に使用されている農薬ほど毒性や人畜への影響が分かっている物質はないといえるのではなかろうか。
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