花屋は小学1年生女子には人気の職業だが・・【花づくりの現場から 宇田明】第12回2023年6月29日
前回は花屋が1店減ると花農家が4戸減るという話でした。
逆説的ですが、花屋が減らなければ花農家は減らず、生産量を維持することができます。
農業は、「つくってなんぼ」ではなく「売れてなんぼ」、さらには「小売りが儲かってなんぼ」です。
花屋あっての花農家。
今回は花農家のパートナー、花屋を小学生がどう見ているか考えます。
毎年、ランドセルメーカーの最大手クラレが、「新1年生の就きたい職業」を発表しています。
アンケート調査の対象は、4月に入学した小学1年生男女とその親および6年生。
この調査は、新1年生の憧れの職業がわかるとともに、花屋の問題点をもするどく指摘しています。
1年生女子はどんな職業に就きたいのでしょうか。
調査開始以来25年連続で1位は「ケーキ屋・パン屋」(表)。
花屋は2011年までは2位をキープしていました。その後は「芸能人・歌手・モデル」に抜かれましたが、3位の人気職業です。
(なお、花屋は女性に限った職業ではありません。男性も多い職業ですが、男子からの回答に花屋はなかったので、本稿では女子のみを掲載しています)
これだけなら、花屋は1年生女子の就きたい職業、憧れの職業で、花屋経営者や従業員、さらには花産業にとって誇らしいことです。
問題は、1年生のときには花屋になりたかったのに、6年生になるとそうではなくなることです。
1年生の1位ケーキ屋・パン屋、2位芸能人・歌手・モデルは6年生でもベスト10に入っていますが、花屋はありません。
それには親の考えが影響しているようです。1年生の親は、子どもを花屋にならせたいとは考えていないからです。
親が就かせたい職業は、堅実で安定した職業が上位を占めています。
看護師、公務員、会社員、医療関係、薬剤師、医師、教員、保育士です。
かろうじて、芸能人・歌手・モデル、ケーキ屋・パン屋が9位、10位に入っていますが、6年生とおなじように花屋はありません。
芸能人・歌手・モデルは親も憧れていることは理解できますが、おなじ小売業である花屋とケーキ屋・パン屋とはなにがちがうのでしょうか。
家庭での購入額がちがいます。
そのことは、総務省家計調査の切り花とケーキの年代別(世帯主の年齢)支出額をみれば明らかです。
年間の支出額(2022年)は切り花が7,992円、ケーキが7,665円で似かよっています。
しかし、年代別の支出額にちがいがあります。
切り花の支出額は高齢者ほど多く、小学生の親世代である30歳代、40歳代は少なくなっています(図)。
ケーキの支出額は親世代に多く、高齢者は少なく、切り花とは真逆です。
つまり、小学生の親はケーキが好きでよく買いますが、花はそれほどでもないことがわかります。
親が花に関心が低く、家庭に花や緑が少ないことが、子どもに影響していると考えられます。
1年生は親の意向に関係なく、単純にきれいな花に囲まれた花屋になりたいと思っています。
それが成長するにつれ現実的になり、親が好きな職業や、親が勧める職業に就きたいと考えるようになるのでしょう。
では花屋になりたいという1年生女子に、憧れを持ちつづけてもらうにはどうすればよいのでしょうか。
親に、花に関心をもってもらうことです。
それには、「花育(はないく)」をもっと活用すればよいでしょう。
農水省は、食育に倣って、子どもへの情操教育や未来の消費者を創出する花育に力をいれていますがマンネリ化しています。
その花育を、子どもをつうじて親に働きかけ、花と緑あふれる家庭をつくる活動に再構築すべきです。
もちろん、活動の中心は花屋であり、生産者と卸売業者がバックアップします。
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