物価の優等生はどこに【原田 康・目明き千人】2023年7月1日
第2次大戦後の物価の高騰の時代から鶏卵は物価の優等生であった。肉類や魚類の不足の中で動物性たんぱく質として鶏卵は貴重な食品であった。当時の鶏は農家の庭や養鶏場で走り回り鶏の健康にも良い養鶏であった。
時代が変わり生産性を上げるためにケージ方式の養鶏となった。金網で3~5段くらいのケージを作り一羽ごとの狭い金網の中に鶏を入れる方式である。鶏舎も冷暖房完備で昼と夜との調節ができる。餌や水はベルトコンベアーで流し、産んだ卵もコンベアーで集める。大型の鶏舎では1万羽以上の規模となった。「養鶏場」ではなく「鶏卵製造工場」となった。卵を産むのが機械ではなく鶏の工場である。このような生産の合理化によって鶏卵は物価の優等生の位置を維持している。
また、鳥の流行病のインフルエンザにかかると養鶏場の全部の鶏が殺処分となるので養鶏場への出入りは人を含めて動物は厳しく制限されている。
鶏卵は鶏が産み落とした時から最終商品である。流通の途中で付加価値が付かない商品である。サイズ別に分けてパックに入れる程度である。従って流通の中間の卸売業者も少なく、マージンも低い。鶏卵を取り扱っている卸売業者がマージンは空になった段ボールの回収くらいだと笑っていた。
殻付きの鶏卵は輸入がほとんどゼロなので鶏卵の重量ベースの自給率は96%である。しかしながら飼料のトウモロコシ、大豆、小麦がほとんど輸入品なのでこれらを差し引いたカロリーベースの自給率は13%くらいとなりカロリーベースの日本の食料の自給率が38%と低い要因の一つとなっている。
鶏卵の流通にも変化が起きている。鶏卵から殻をとった卵白や卵黄等の液卵は加工食品の原料となり多くが輸入品である。
飼料のトウモロコシ、大豆、小麦は日本の農地の規模、気候等から広くて気候の安定している外国の大農場には競争力で負ける。更に世界各地での紛争がこれらの餌の原料となる農産物の価格を押し上げている。農家もコストを下げる努力をしているが飼料、燃料、人件費などが上がるなかでは限界がある。
消費者が安全な食品として日常でそのまま口に入れている牛乳や鶏卵を物価の優等生として小売店で定番商品として大切にしたいものである。
(原田康)
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