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冥土in JAPAN【小松泰信・地方の眼力】2023年7月5日

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「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」と、性的少数者への差別発言で今年2月に首相秘書官を更迭され、経済産業省官房付となっていた荒井勝喜(あらい・まさよし)氏が官房審議官として復帰する。

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気になるポストと大臣の思考回路

経産省によれば、「荒井氏が現在携わっている業務の継続性と適材適所の観点から経産相が判断した」とのこと。

差別発言の主を適材とするポストに興味津々。このような人事を行う大臣は人事不省。

問われなければならないのは、荒井氏にどのような更生プログラムが施され、いかなる方法によって、氏の不健全な価値観や考え方が改まったことを確認したのか、である。

実際は、人の噂も七十五日、ほとぼりが冷めた頃に、しれーっと復帰ということでしょう。まぁ、そういう国なんです。

武器はいらんかね~? いらん!

まぁ、そういう国なんです、では済まない問題があちこちで、粛々と進められている。

武器輸出の規制緩和に向けた動きもそのひとつ。

自民、公明両党が6月30日に、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の要件緩和を検討する与党協議で論点整理案を示したことを、東京新聞(7月1日付)が報じている。同案によれば、「日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を念頭に、共同開発・生産の相手国による第三国輸出を認める必要性で一致し、日本からの輸出解禁を求める内容も記載。与党案に沿って政府方針が決まれば、国際紛争を助長しないという三原則の理念が骨抜きになる恐れがある」と警鐘を鳴らす。

「輸出が拡大したら歯止めが利かなくなる。日本の武器が対立、戦争を激化させることが予想され、敵を増やすことになりかねない」と懸念を示しているのは林吉永(はやし・よしなが)元空将補。

「日本の技術で他国と一緒につくった戦闘機をほしいと言われても『日本には三原則があるので英国から買ってください』では日本として大損してしまう」と、与党協議座長の小野寺五典(おのでら・いつのり)元防衛相が民放番組でそう強調したことも合わせて紹介している。

さらに同紙(7月4日付)は、「殺傷能力のある武器輸出に関し、政府・与党は共同開発・生産を除いて『できない』としてきたが、防衛装備品の輸出ルールを定めた『防衛装備移転三原則』の要件緩和を検討する与党協議で『否定されていない』と説明を変化させた。事実上の解釈変更だが、与党協議は非公開で議事録も公表されていない。(中略)国会で十分な議論もないまま、国民の目が届かない『密室協議』で国のあり方が変えられようとしている」と、警鐘乱打。

危機を訴える多くの地方紙

琉球新報(6月27日付)の社説は、「安倍政権が『戦争のできる国』への大転換を行い、岸田政権は『軍事国家』へ大転換する役割を果たしている」とし、「第2次世界大戦までの反省の上に築いてきた日本の平和主義は風前のともしび」と慨嘆する。

しかし、「ウクライナは日本に殺傷能力を持つ武器を求めていない」ことから、「平和主義に基づく民生・復興支援こそ日本にふさわしい。非軍事の外交こそが日本の国益につながる」として、全面禁輸に戻す議論の必要性を説く。

沖縄タイムス(6月27日)の社説は、「平和国家としての歩みを手放すような行為だ。国の在り方にも関わる解釈をなし崩し的に変更することは許されない」と訴える。

そして、「日本から周辺国へ武器が輸出されれば、東アジアの緊張は一層高まる。平和主義の根幹に関わる解釈変更を与党だけで決めることは許されない」として、「国民的な合意はもちろん」としたうえで、「国会で議論を尽くすべきだ」とする。

愛媛新聞(6月29日付)の社説は、「これまで、共同開発・生産の場合を除いて輸出できないとしてきたはずだ。『日の丸兵器』が国際紛争を助長するリスクを避けるためなのは言うまでもない」として、「時の政権の一存で、戦後堅持してきた平和主義が揺らぎかねない現状を強く危惧する」と危機感をあらわにする。

政府が、「明文の禁止規定がない」ことを根拠にして、「使用目的が5分野(小松注;救難、輸送、警戒、監視、掃海)に該当すれば殺傷能力があっても輸出可能と打ち出した」ことを、「都合のよい解釈変更」と指弾し、「14年の集団的自衛権行使容認や、反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を明記した昨年12月の安保関連3文書など、閣議決定で国の針路を変えた事例とも軌を一にしよう」と、追及の手を緩めない。

「注力すべきはインフラ復旧など軍事と一線を画した復興支援だと、肝に銘じたい」と締める。

信濃毎日新聞(6月30日付)の社説は、「集団的自衛権、敵基地攻撃能力に次ぐ、武器の開発から製造、輸出へと至る一連の政策は、憲法をさらに形骸化させている」とし、「なぜ武器輸出が必要なのか、憲法をどう考えるのか。自公は規制緩和の度合いを詰める前に、それぞれの見解を明らかにし、その是非を国民に問うべきだ。ウクライナは日本に武器供与は求めておらず、理由たり得ない」とする。そして、「議事録は公開し、会見に応じてはどうか。密室同然で次々と防衛政策を転換させている両与党が負う責任は、それだけ重い」と、急所を衝く。

北海道新聞(7月1日付)の社説も、「平和主義の下で禁じてきた殺傷能力のある武器の輸出を解釈の変更で可能とすることは、恣意的な運用と言わざるを得ない。国会論議を経ることなく、容認するようなことがあれば、もはや法治国家とは言えまい」と憤る。他国と共同開発した防衛装備品について、日本から第三国への直接輸出を認めることも検討されていることについても、「戦闘機は明らかに高度な殺傷能力を持つ兵器であり、なし崩しの例外規定はつくるべきではない」とする。そして「戦後築き上げてきた平和国家を根幹から覆す大転換を、与党の身内だけの協議で決めるのは危うい。国会に提示した上で、広く国民論議を尽くさねばならない」とする。

本当に愚かなこと

この原稿ができあがる寸前、時事通信社(7月5日11時34分配信)が、自公両党が、防衛装備品の輸出ルール緩和に向けた実務者協議を開き、報告書をまとめて両党の政調会長に提出したことを教えてくれた。NHKの12時のニュースはまったく触れなかった。戦争はこりごりしたはずのこの国で、兵器がせっせと作られ、輸出され、無辜(むこ)の民が冥土に旅立つことに加担する可能性が高まっている。そのお返しは、この国が冥土と化すこと。なんと、愚かなことか。

「地方の眼力」なめんなよ

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