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「組合員への最大の奉仕」は数値化目標とその実践から!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年7月18日

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「JAは非営利組織」の錦の御旗は?

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次

かつて、協同組合であるJAの特徴は非営利組織である、とJAグループの役職員はじめ多くの関係者が強調していた時期がある。オイルショックの物価高騰期や昭和後期のバブル期などでは、非営利組織であることが新規の組合員加入を誘引した、という関係者もいた。

JAの役職員のなかには、非営利組織であることが「善」で、民間企業のような利益を追求するのは「悪」だ、といった話をする人もいた。しかし、非営利組織の事業や経営には、どんな特性があり、役職員の使命感や役割、サービス業務の内容など、具体的なものはなかったと聞いている。剰余金の処分方法に非営利組織の特徴があったという職員もいたが、どちらかといえば、錦の御旗のようなものだったのではないか。

また、農協法の営利を目的に事業を行ってはならない、という文言が強く印象づけられていたのも事実だろう。農協法から「営利」の言葉が消え、「組合は、その行う事業によって、その組合員および会員のために最大の奉仕をすることを目的とする」となった。これによって、「非営利組織」というインセンティブ(動機、刺激、誘引)が、JAの役職員のなかから消えていったように思う。

ちなみに、「JA綱領」は、それまでの「協同組合綱領」を改め、1997年第21回JA全国大会で新たに決議されたが、前文にも、項目にも、「非営利」という言葉は使われていない。

最近、JAは非営利組織であるという御旗はどこへ行ったのだろうか。新しく組合員になったみなさんやJAに新採用された職員は、非営利組織であることを知ってるのだろうか。もはや、「非営利」であることの意味や組織的な価値はないということか。

非営利組織であることに、甘えてきたJA役職員はいないか

ほとんどJA界では使われなくなった「非営利」組織という言葉だが、JA経営者や幹部職員と話していると、事業戦略や経営判断などの場面で、非営利の組織性を理由に検討や見直しをするケースに出会った。それを、組合員や地域社会に向けて強調してもいいのでは、と思うことも少なくなかった。

一方で、JAのコンサルや調査の仕事を通じて、非営利組織であることを良いことに、経営の合理化や効率化などに消極的で、取り組むべき課題を看過し、放置・先延ばししてきたJAもあった。

私は、その頃、「JAは非営利経営かもしれないが、農業経営を行う組合員は、経営の大小に関わりなく「非営利」の経営ではありません。」という話をしてきた。また、「非営利」だから、経済事業は赤字でもいい、ということではないはずで、収支均衡は事業・経営の前提であると。

そして、JAの営農経済事業は、農業経営を行う組合員の農業粗収入や農業所得を1円でも多く手にしてもらうこと、また、農業経営費用の資材費などを1円でも少なくすることである。また、JAの事業利用でも、資材店舗や拠点整備を通じて、配送コストを1円でも下げて、1分でも配送時間を短縮することであると、目標数値化を提案した。

こうした数値目標を具体的に提示し、実現していくことが事業・経営であるのに、数値目標も示さず、「農家の農業所得の向上と配送システムの合理化、コスト削減に取り組みます」といった抽象的な文言で誤魔化すのは、組合員の信頼を失いかねず、JA離れを招きかねないとの危惧を感じたのである。

多くのJAの農業振興計画は、行政が策定するような計画が多く、方針や方向を書いた文章、農業センサスの解説、これまでのJAの販売実績の推移などを整理し、まとめたものが少なくない。なかには、地域農業振興計画の目標が、JAの農畜産物の販売高になっているケースもあった。

こうした取組みが行われてきた背景に「JAは非営利」という言葉への役職員の甘えがあったのではないか、と思えてならない。JAは、組合員の農業経営や地域農業のため精一杯頑張っている。具体的な数字を掲げて事業を行い、事業利益を意識する、コストを管理する、といった取組みは難しい。営農体制の強化、販売力の強化を図りたい、と抽象的な方針をあげ、でも、事業の赤字はやむを得ない、という考え方だ。

現在では、そんな考えの役職員はいないだろうが、「組合員および会員のために最大の奉仕をすることを目的とする」という農協法上の規程に真摯に向き合い、明確な目標の設定、施策、結果、成果を数値化して取り組んでいるのだろうか。

JAは、組合員の農業経営は、もっと儲けてもらいたい、という強いメッセージを発したいし、そのために、何をするかを、セグメント(細分化)した農業経営ごとに目標を数値化し、JAの支援策を提示する。

規模の大小はともかく、農業経営を行う組合員には、前向きに、少しでも粗収入を増やし、品質の良い、単価の高い作目を作ろうという気持ちをもってもらいたい、そのような農業経営には、JAが積極的にお手伝いします、という姿勢が重要ではないか。

JAは「非営利」の組織だから、農業関係の事業で利益を出すのはおかしい、営農経済・販売事業は赤字なのは仕方ない、という論調のなかにも甘えがあるように思えてならない。何があれば、黒字化するか、を考えてみることである。

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