【JCA週報】農業協同組合と事業~今日的有効性を問う」(小山良太)2023年7月24日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長土屋敏夫日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構の協同組合研究紙「にじ」の最新号である2023年夏号の特集解題です。
農業協同組合と事業~今日的有効性を問う~特集改題
福島大学教授 小山良太教授
はじめに
福島大学教授 小山良太教授
日本の農協は戦後政策主導によって成立され、「制度としての農協」という性格を有してきたが、近年その位置づけが大きく変わろうとしている。行政補完組織からの転換である。
また、販売事業、購買事業、営農指導事業などをあわせた営農関連事業が赤字の農協は、その改善をしなければならない。多くの農協で信用・共済事業の収益によってこれら営農関連事業の赤字を補填することで、事業が存続し、組合員にサービスを提供してきた。こうした総合事業方式が今後はとれなくなる可能性がある。事業損益を厳密に算出することは経営にとって重要なことであるが、それによって日本型総合農協が、信用・共済専門農協に解体されるということも考えられる。総合主義が再編に迫られている。そうなれば、農家の販売・購買事業を誰が担うのかという問題が生じるであろう。
また、大規模化、法人化した農業経営は農協から脱退して独自で販売・購買活動を行うものも増えてきており、農協の販売・購買事業のあり方も再編が迫られている。網羅主義からの転換である。
現在、農協合併の進展によって農協は複数の市町村を範囲とする大規模なものとなっている。それによって組合員との物的、心理的距離の拡大が問題とされている。しかし、いくつかの農村では過疎問題が生じており、地域問題の解決に果たす農協の役割が期待されている。日本の食料、農村を守るために、もう一度協同組合の原則にたった組織、事業活動の構築が必要となっている。
今問われているのは、日本型総合農協とはなにか、つまり総合的事業展開こそが農協の優位性であることの再検証である。
これまで日本の農業協同組合は農業政策や金融政策、経済のグローバル化など与件の変化に対し対症療法的に対応してきたが、既存の農協理論(組織・事業)では対応できない局面にきている。既存研究では、それぞれの与件(政策、環境)の変化に対応し、理論構築を行い、4~5年先の中期ビジョンを描いてきたが、農協理論の連続性、接続性が必要となっている。
また、近年注目されている多様な協同組合組織、非営利協同セクターの中で、農業協同組合をどう位置づけるのか、また位置づけることが可能なのか、伝統的な協同組合理論が主張してきた点、組合員が有する「三位一体的性格」(出資、利用、運営の一体性)、「非営利・非公益的性格」など、現代的に再検討・再定義することも重要である。
つまり、多様性を前提としたメンバーシップ組織は成立可能なのかという点である。組織のメンバーはそもそも同質性を伴う。その組織構造を担保すると多様な対象を少人数・多組織化する複雑なネットワーク型の組織基盤が必要になる。その組織を新しい財・サービスを伴う多様な事業と組み合わせるようなマネジメント方式の構築が求められている。
以下の章立ては下記のとおりです。
本特集改題と各論考はJCAのウェブサイトにて全文を掲載しておりますので、ご覧ください。
1.日本型農協の生い立ち
2.これからの農協像
3.農業協同組合と事業~今日的有効性を問う~
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