花の名前がわからない【花づくりの現場から 宇田明】第14回2023年7月27日
花が嫌いな人はいない。そのわりには家庭に花が少ない。7割の世帯は、1年間に1度も花を買ったことがない(総務省家計調査)。花が身近にならない理由のひとつが、花の名前がわからないこと。知らないものには興味がわかない。名前を知らないから興味がないのか、興味がないから名前を知らないのか、卵が先か鶏が先かですが、花の名前が知られていないことは事実。
花の名前をどれだけ知っているか、表を見ていただきたい。
切り花の流通量ベスト10。参考に野菜を示してあります。
名前を見て、姿カタチを思い浮かべることができるでしょうか。
野菜なら、買い物、料理をしない現役世代の男性でも、すべてわかるでしょう。
切り花はどうでしょうか。
キク、カーネーション、バラ、ユリはわかると思います。ガーベラ、スターチス、トルコギキョウ、アルストロメリアがわかるひとは多くありません。
リンドウ、スイートピー、カスミソウの名前は知っていても実物と一致させるのはむずかしいでしょう。
流通量ベスト10の切り花でこの状態です。
これは日本に限ったことではありません。
花の国オランダでさえ、みんなが知っている花の名前は、バラ、チューリップ、ヒマワリの3種類だけといわれています(花の写真を見せて70%以上の人が名前を正しく答えられた種類)。
花の名前がわからない一番の理由は、花の種類が多いことです。
市場に入荷する切り花の種類は1,100種類。野菜の200種類、果物の100種類と比べても圧倒的に多い。
前回紹介したように、雑草まで商品にするのですから、種類が多いのは当然。
しかも野菜の名前は、和名かせいぜい英名(キャベツ、トマト、レタスなど)で、わかりやすい。
花には学名(属名)が多いことも、花の名前をむずかしくしています。
学名はラテン語やギリシャ語でつけられているので、日本人には英名よりなじみにくい。
キク(菊)、バラ(薔薇)、ユリ(百合)は和名ですが、カーネーション、スイートピーは英名、ガーベラ、スターチス、アルストロメリアは学名(属名)をそのまま用いています。
ひとつの花にいくつもの名前があることも、わかりにくくしています。
トルコギキョウはもっとも混乱しています。
和名のトルコギキョウと、旧属名のリシアンサス、新属名のユーストマが混在しています。
余談ですが、トルコギキョウはトルコともキキョウとも関係がありません。北米原産のリンドウ科です。
花き園芸と、英国での名前を基本とするハーブ業界でも呼び名が違います。園芸ではサルビアですが、ハーブ業界ではセージになります。
花屋の店頭では、おなじ花が和名、英名、旧学名、新学名、さらには商品名など混在して表示されています。
花屋が混乱し、頭を痛めているのですから、消費者がわからないのはあたり前。
消費を増やすには、花の名前を知ってもらうことが第一歩です。
そのためには、花屋は値段とともに名前を表示することが不可欠になります。それにもかかわらず、名前の表示がない花屋が多くあり、名前を知ってもらうチャンスを逃しています。
いまさら覚えにくい学名を和名に変えることは困難です。せめて、いくつもあり混乱している名前を統一し、全国の花屋がおなじ名前を表示できるようにはしなければなりません。
では、花の名前を整理し、統一するにはどうしたらよいのでしょうか。
市場で流通している花の品目名、品種名は、日本花き卸売市場協会のJFコード(日本花き取引コード)で管理されています。
各市場から提出された新しい品目、品種データはJFコード管理委員会で整理され、6桁のコード番号が割りふられます。入荷データなども決められた品目名・コード番号で管理されています。
したがって、すべての産地、市場、小売がJFコードを用いてDX化を進めれば、業務が改善されるだけでなく、花の名前もおのずと統一されるでしょう。
重要な記事
最新の記事
-
日本人と餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第331回2025年3月7日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「コメ騒動」の原因と展望~再整理2025年3月7日
-
(425)世界の農業をめぐる大変化(過去60年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月7日
-
「とやまGAP推進大会」に関係者約70人が参加 JA全農とやま2025年3月7日
-
新潟県産チューリップ出荷最盛期を前に「目合わせ会」 JA全農にいがた2025年3月7日
-
新潟空港で春の花と「越後姫」の紹介展示 JA全農にいがた、新潟市2025年3月7日
-
第1回ひるがの高原だいこん杯 だいこんを使った簡単レシピコンテスト JA全農岐阜2025年3月7日
-
【スマート農業の風】(12)ドローン散布とデータ農業2025年3月7日
-
小麦ブランの成分 免疫に働きかける新機能を発見 農研機構×日清製粉2025年3月7日
-
フードロス削減へ 乾燥野菜「野菜を食べる」シリーズ発売 農業総研×NTTアグリ2025年3月7日
-
外食市場調査1月度市場規模は3066億円2019年比94.6% コロナ禍以降で最も回復2025年3月7日
-
45年超の長期連用試験から畑地土壌炭素貯留効果を解明 国際農研2025年3月7日
-
日本赤十字社のプロジェクト「ACTION!防災・減災」に参加 コープみらい2025年3月7日
-
健康増進へ野菜摂取レベルなど競う企業対抗企画 タキイ種苗が優勝2025年3月7日
-
フルーツピークス横浜ポルタ店2周年記念 いちごの超豪華パフェや感謝価格のタルト登場2025年3月7日
-
EVトラックの最適充電マネジメントシステムサービスを提供開始 グリーンコープ生協くまもと2025年3月7日
-
「金芽米」活用で市職員の花粉症予防・改善にチャレンジ 大阪・泉大津市2025年3月7日
-
台湾へのイチゴ輸出を本格化 JAかみましき2025年3月7日
-
道の駅「明治の森・黒磯」で「手塚さんちの長ねぎドレッシング」新発売2025年3月7日
-
鳥インフル 米デラウェア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年3月7日