シンとんぼ(54)食の安全とは(12)2023年7月29日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。現在、「毒性とは何か」をテーマにすえており、毒性を科学的にとらえて身近なものと比較しながら毒性を考えている。
前回、「農薬Aを散布したナス159本を一気に食べることで体重50kgの人の致死量に達する。」と仮設を述べたが、ちょっと説明が足りなかったので追加で説明したい。
ここでいう「農薬Aを散布したナス」とは「農薬Aを散布した直後で、散布後の付着量が全量ナスに残留している状態のナス」のことを指す。通常ナスが出荷されるのは、どんなに早くても散布後24時間経過しないと出荷できないので、散布した農薬が全量残っているナスが出荷されることはまずないだろう。散布後には農薬成分の分解が起こったり、洗浄で洗い流されたりして、人が口にする時には、かなりの量が減少しているからだ。
そもそもADI自体も、動物実験で得られた1日摂取最大無作用量(mg/kg/day)、つまり実験動物が一生涯食べ続けても何ら健康に害を与えない量をもとに、人間に当てはめるために100倍の安全係数をかけて(=つまり、100分の1の量に減らす)つくられている。なので、仮に定められたADIに相当する量が残っている農産物を口にしたとしても、実際に何らかの健康被害を起こしうる量からすれば、無いに等しいぐらいごく微量な量しか農薬の成分は入ってこないのだ。
それだけ、農薬は2重3重に食の安全を考慮して、登録認可しされている。しかも、使用者(=農家)に対し、使用方法(登録作物、濃度・量、収穫前使用日数、使用回数)を必ず守るように義務付けており、もし使用方法に無い使い方をした場合は、農薬取締法違反が問われ、違反が確定すれば、罰金刑や禁固に処されることもあるのだ。こういった背景があるので、国内の農産物の場合は、乱暴な言い方すると、農薬残留基準超過の農産物を食べたとしても健康被害が出ないほど安全面が考慮されているのだ。
これから考えても、毒性を調べつくされている農薬と、健康被害を起こす可能性があるかどうか詳細が分かっていない普通の食べ物に含まれている物質とを比較した場合、どちらにリスクがあるのだろうか。癌の疫学者が言うように、普通の食べ物の方が健康被害リスクが高いのだろうが、その普通の食べ物のリスクっていっても、ごく微量なので通常食する量であれば全く問題ないのは間違いない。本当に毒性っていうのは有る無しではなく、量なのだ。
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