シンとんぼ(55)食の安全とは(13)2023年8月5日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。現在、「毒性とは何か」をテーマにすえており、毒性を科学的にとらえて身近なものと比較しながら毒性を考えている。
前回、癌の疫学者は、その普通の食べ物の方が発がんリスクが高いといっていると紹介したが、普通の食べ物に含まれる発がんリスクがあるものってなんだろう。それの代表はかび毒だろう。
現在、かび毒と呼ばれるものは100種類以上が知られている。そのうち、日本で消費される農産物や食品に含まれる可能性があるかび毒は、ナッツ類や穀類、乾燥果実、牛乳に含まれる可能性のあるアフラトキシン類(アフラトキシンB1、B2、G1、G2、M1、M2)、穀類や豆類、果実、コーヒー豆に含まれる可能性のあるカカオオクラトキシンA、麦などの穀類に含まれる可能性のあるトリコテセン類(DON:デオキシニバレノール、NIV:ニバレノール、T-2トキシン、HT-2トキシンなど)、りんご加工品に含まれる可能性のあるパツリンなどが知られている。
かび毒を引き起こす主なかび菌は、アスペルギルス属菌、フザリウム属菌、ペニシリウム属菌である。このようなかび毒が農産物や食品を侵す方法は様々で、例えばフザリウム属菌は、麦の開花期から登熟期にかけて麦の穂に感染して赤かび病という病害を起こし、同時に麦の穀粒の中にかび毒であるデオキシニバレノール(DON)や、ニバレノール(NIV)などをつくり出す。また、りんご果汁での汚染が知られているパツリンは、ペニシリウム属菌の胞子がりんご果実の傷口から侵入し、貯蔵中に果実の中で増殖してかび毒であるパツリンをつくり出す。
このように作られたかび毒を含む農産物や食品を口にした時、人はかび毒を摂取することになるが、食品にかびが生えているかどうかは肉眼ではわからない場合がほとんどだ。加熱すれば、かび菌そのものは死滅させることができるが、かび毒そのものは、比較的熱に強く、通常の加工・調理では十分に減少しないものも多いので、食品からかび毒を取り除くことは困難である。
なので、かび毒を防ぐには、農作物や食品にかび菌が侵入・繁殖することを未然に防ぐしかなく、それを防ぐことができるのが農薬による防除なのだ。農薬を毒という方々には、「毒をもって毒を制す」といえばご理解いただけるだろうか?
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】農水省(4月21日付)2025年4月21日
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日