シンとんぼ(56)食の安全とは(14)2023年8月12日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。現在、「毒性とは何か」をテーマにすえており、毒性を科学的にとらえて身近なものと比較しながら毒性を考えている。
前回、かび毒を防ぐには、農作物や食品にかび菌が侵入・繁殖することを未然に防ぐしかなく、それを防ぐことができるのが農薬による防除であり、「毒をもって毒を制す」という表現を使った。
まるで、かびが全て悪者のように感じる方がいるかもしれないので、逆に人間の暮らしに役立つ「かび」もいることを紹介しておこうと思う。
実は、人間が「かび」を有効活用する例は古く、 その代表例として、みそやしょうゆなどの発酵食品があり、どれも「かび」の力によって生み出されるものだ。日本には様々な発酵食品が存在し、世界中で最も上手にかびを活用してきた歴史があり、「かび」の働きを利用して作られる食品には、みそやしょうゆ、みりんの他、かつおぶし、甘酒、テンペなどがある。食品の他は、人間が感染症になったときに使用する抗生物質や、健康増進や美容などに使用される酵素製剤などもある。
このように同じかびでも、その種類や使い方、繁殖場所によって、人間にとっての有益なものもあれば、逆に有害なものもあるということだ。違った言い方をすると、「かびは人間にとって有害なのでかびは排除しなければならない。」とはならず、「有害なかびについては排除するべきであるが、有益なかびについては安全に使用すれば良い」となる。
同じようなことが農薬にも当てはまるような気がする。つまり、「過去には人間にとっても有害な農薬が確かに存在したこともあったが、そのような農薬は現代においては排除されている。現代は、人畜毒性が低く、あらゆる毒性面での試験を重ね人畜への安全性が確認されている農薬ばかりであり、かび毒など人間に害するものを排除することができるというメリットがあるので、使用方法を守って安全に使用すればよい。」といっているのと同じような気がするのだがいかがだろうか?
そう考えてくると、何度も引き合いに出して申し訳ないが、「たとえ毒性が低くても農薬が残留していれば安全ではないが、農薬より毒性が強い天然物由来の物質が作物に残留していても、天然物なのだから「安全」だ」という考え方に改めて矛盾を感じてしまう今日この頃である。
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