イタリアの「リケジョ」のスタートアップ ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2023年8月17日
Progeva社の社長、レッラ・ミッコリスさん
有機廃棄物のリサイクルなどに取り組む南イタリア、プリア州のProgeva(プロジェヴァ)社の社長、Lella miccolis(レッラ・ミッコリス)さんは、Consorzio Italiano Compostatori(イタリア・コンポスト企業連盟)の会長も務めている。1995年にBari(バーリ)大学の生物学科を卒業後、Bari市で行われた「総合廃棄物管理」に関する研修に参加してその重要性を知り、起業を志した。
しかし、当時の南イタリアでは女性の起業家は相手にされず、その上住民はそうした施設を家の近くに作ることに反対したという。話し合いを重ねた結果、Laterza(ラテルツァ)町の若い町長がその重要性を理解して協力してくれ、10年後の2006年に会社を立ち上げることができた。現在は従業員30人、2022年の年間売り上げ1570万ユーロ(約2.4億円)の会社に成長させた。
Progeva社の社屋
同社は分別収集による有機廃棄物のほか、産業用堆肥化による農産業廃棄物や野菜廃棄物のリサイクルを行っている。主な原料は町が分別収集した生ごみや公園や街路の樹の剪定で出た枝などを使っている。
Miccolisさんは「土地にやさしい完全に天然、高品質の堆肥を生産することができます。堆肥は、他の成分やサプリメントと混合するさまざまな企業の配合の基礎となります。土壌改良剤や環境に優しい肥料であり、有機農業や持続可能な農業、造園や環境回復活動に使用されるだけでなく、プロの園芸や趣味の園芸用の基材としても使われます」と話す。
また、「エネルギー自給自足のためにクリーンで再生可能エネルギーを使用することを選択しました。会社の屋根には事業活動に必要な電力の大部分をカバーする太陽光発電が設置されています。さらにバイオメタンの精製も行う予定です」とも語る。
Progeva社内で
スタートアップに際しての困難については、「純粋に男社会である廃棄物業界で、起業家として、また女性として尊重してもらえるようにすることでした」と振り返る。 「まだほとんど知られていない革新的なビジネスを提案していましたが、アイデアを技術的にも財務的にも実現可能にするのは容易ではありませんでした。堆肥化プラントの建設に適した場所を特定して無数の許可を取得し、意図の共有を促進する必要がありました」。
さらに、「工場に届けられる有機性廃棄物の品質は、分別収集を開始する初期段階で対処しなければならない最も重要な問題の一つでした。なぜなら必ずしも有効な収集システムによって常にサポートされているとは限らなかったからです。 私たちは地元の公共機関などと協力し、有機廃棄物の適切な分別収集が土壌、地球、そしてすべての国民の利益になるという認識を広めるための啓発キャンペーンを推進してきました」。
そのあとどう行動したか。「まず第一に私のプロジェクトの価値、有用性、倫理をしっかりと信じ、次に研究開発、地域のすべての利害関係者との絶え間ない対話を行いました。 それにはコンポスト企業連盟の支援と指導が不可欠でした。私は初めに企業連盟の技術委員会、その後色々な役職を歴任し、2022 年 7 月に会長に選出されました。 イタリア・コンポスト企業連盟で初めての女性の会長です」。
日本と同様、イタリアでも女性の経営者は少ない。女性の起業家はファッション界などに多く、ミッコリスさんのように工場を立ち上げた女性はあまりいない。そうした中でコンポストの会社を立ち上げ、男社会で頭角を現し、実力で企業連盟の会長になったミッコリスさんは多くのイタリア女性に勇気を与えている。
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