花の名前の混乱-東京ではヒサカキ(非榊)をサカキ(榊)とよび神棚に供える【花づくりの現場から 宇田明】第16回2023年8月24日
花産業の一大イベント、お盆が終わりました。
次の物日(ものび)は、秋の彼岸。
お盆、春秋の彼岸に墓参りをするのは、日本の宗教行事、伝統文化です。
お墓のお供えの花は、前回報告したように現在ではキクが主役。
しかし、キクは1960年代に葬儀業者や花屋の都合で選ばれただけで、仏教の教えでも日本の伝統でも文化でもありません。
古来より日本では、神棚にはサカキ(榊)、お墓にはヒサカキ(非榊)、シキミ(樒)がお供えされてきました。
つまり神事にはサカキ、仏事にはヒサカキ、シキミが伝統・文化です。
現在でも多くの農村では、サカキ、ヒサカキ、シキミを個人または集落で裏山などに植え、神事、仏事のお供えとして自給自足しています。
花の名前が混乱していることを報告しましたが、最も混乱しているのが、サカキとヒサカキです。
(下記参照)
サカキ(Cleyera japonica)もヒサカキ(Eurya japonica)もツバキ科の常緑広葉樹で、
サカキは関東以西、ヒサカキはサカキよりは低温性で、岩手県以南に自生しています。
ちなみに、「榊」は神さまにお供えする木として、日本でつくられた国字です。
混乱の元凶は、東京でヒサカキをサカキと称して神棚にお供えしていることです。
つまり、東京でも大阪でも、神棚にサカキをお供えする習慣、伝統文化はおなじですが、東京ではサカキではなく、ヒサカキをお供えしているのです。
東京の人は、自分たちが神さまにお供えしているのがサカキと信じこんでいます。
西日本の人が東京の神棚を見たら、腰を抜かすほど驚きます。
お墓にお供えするヒサカキを神さまにお供えするなんて・・・。
東日本にはサカキが自生していないので、ヒサカキで代用したのは自給自足、地産地消経済の時代には仕方がないことだったのでしょう。
マツタケが手に入らないので、シイタケをマツタケとよんで代用したようなものです。
それぞれの地域の花屋、直売所などでサカキ、ヒサカキを販売するのなら、地方名のままでもそんなに不都合はないでしょう。
いまはネットでお供えの花も買える時代。全国各地から注文があります。
一例として、「伊勢榊」と「八丈榊」ブランドがネットで購入できます。
おなじ榊でも、伊勢榊はサカキですが、八丈榊はヒサカキです。
大阪の人が八丈榊を、東京の人が伊勢榊を注文したら、思っているサカキと違うものが届き、クレームになります。
マツタケを注文したのにシイタケが送られてきたら詐欺だといわれても仕方がない。
もちろん、ネット販売では対策が取られている。
伊勢榊は「本サカキ」、八丈榊は「ヒサカキ」であることが注に示されていますが、本サカキやヒサカキを理解できる消費者は多くありません。
名称の整理にあたっては、神棚に西日本はサカキ、東京はヒサカキをお供えするという伝統文化を変えることはできでしょう。
しかし、全国的な流通の混乱防止のためには、園芸的、商業的に名称の整理が必要です。
その場合、よりどころとすべき業界のJFコード(日本花き取引コード)もサカキは整理できていないので、役に立ちそうにありません。
さらに、東京の花屋や消費者は、いまさら植物学に忠実に、サカキをヒサカキに変えようとはしないでしょう。
まだまだサカキ、ヒサカキの混乱は続くようです。
東京の人がヒサカキをサカキとよぶのは、イメージチェンジのためにキクをマムとよぶように、花産業の融通無碍体質の一環で、身から出たさびでしょうか。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲にイネカメムシ 県南部で多発のおそれ 栃木県2025年7月9日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」【公明党】米政策が農政の柱 谷合正明参議院議員2025年7月9日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」【日本維新の会】農業者への直接支払い実現を 池畑浩太朗衆議院議員2025年7月9日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」【国民民主党】食料安全保障基礎支払いの創設めざす 舟山康江参議院議員2025年7月9日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」【社民党】ミサイルよりコメを! 福島みずほ党首(参議院議員)2025年7月9日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」【参政党】10年以内に自給率を倍増 神谷宗幣代表(参議院議員)2025年7月9日
-
【第46回農協人文化賞】地域ブランドつなぐ 営農経済部門・福岡県・にじ農協組合長 右田英訓氏2025年7月9日
-
【第46回農協人文化賞】「不易流行」で農支援 営農経済部門・熊本県・球磨地域農協組合長 福田勝徳氏2025年7月9日
-
【第46回農協人文化賞】人とのつながり糧に 営農経済部門・長野県・グリーン長野農協元組合長 竹内守雄氏2025年7月9日
-
「不幸の書簡」とストックホルム症候群【小松泰信・地方の眼力】2025年7月9日
-
【アンパンマンはなぜ生まれたか】 ノンフィクション作家・梯久美子さん 第46回農協人文化賞特別講演2025年7月9日
-
7月21日、広島でトラクターデモ 令和の百姓一揆 欧米並みの所得補償求め2025年7月9日
-
【人事異動】農水省(7月10日付)2025年7月9日
-
【JA人事】JA上士幌町(北海道)高橋昭博組合長を再任(6月6日)2025年7月9日
-
【JA人事】JA筑前あさくら(福岡県)熊本廣文組合長を再任(6月26日)2025年7月9日
-
【JA人事】JAグリーン近江(滋賀県)大林茂松組合長を再任(6月21日)2025年7月9日
-
【JA人事】JA新得町(北海道) 組合長に太田眞弘氏を再任2025年7月9日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」鳴戸部屋で兵庫の食材使用「ちゃんこ」を堪能 JAタウン2025年7月9日
-
健診施設機能評価認定更新 JA熊本厚生連2025年7月9日
-
JA鹿本のグリーンハウスミカン出荷順調 7月中下旬ピーク、総量130トン見込み2025年7月9日