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コメの市場があるメリットとは?(7)【熊野孝文・米マーケット情報】2023年8月29日

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8月25日にクリスタルライスの取引会が開催され、37産地3万1,105俵の売り物が出た。売り物のうち5年産米が関東産主体に多く出て前回取引会に比べ20%ほど売り物が増えた。売り物の加重平均価格は1万3,805円で前年に比べ13%の値上がりになっている。

5年産提示価格5年産米の主な銘柄の売り希望価格は表の通りだが、これ以外に秋田あきたこまちが9月末渡し条件1万4200円で出ているほか、価格の提示はないものの福井のハナエチゼンや岐阜のあきたこまちといった売り物もあった。もち米は千葉のヒメノモチが9月渡し条件で1万4500円~1万4800円で出ている。

成約価格は公表されていないが、当日の成約量は7100俵程度にとどまった模様。買い手の卸に言わせると千葉穀主催の新米取引会が先週行われたばかりだが、それよりもさらに高値を提示されており、割高感が強かったので様子見したところが多かったのではないかとみている。

量販店向けの白米販売が多い卸は1か月前に新米の値入条件を量販店側に提示しており、今の玄米価格はそのコストの限界値に来ている。白米の値入価格は諸経費の値上がりにより値上げ要求が通り安くなっているほか、昨年見られたような極端な安値の新米の販売が姿を消しており、その意味では新米の値上げは既定路線であったが、玄米価格が一気に2000円以上上がると再度白米の値上げ交渉をしなくてはならなくなる。

さらに今後出回りが本価格化する売れ筋の新潟コシヒカリや秋田あきたこまちの価格をどうするのか悩ましい。すでに関東コシヒカリとBランク米の価格差は限りなく縮小しており、コシヒカリだからと言って高値を提示できる環境ではない。

また、秋田あきたこまちも玄米60キロ当たり1万4000円以上になると白米5キロ当たりの単価の設定でコシヒカリとの釣り合いが取れなくなるといった悩みもある。こうした全国銘柄の価格設定も悩ましいが、それ以上に今後大きな問題になりそうなのが品位の問題。この問題については8月22日に開催された全米工の情報交換会でも主要産地の参加者が懸念を示していた。

各地の情報概要を紹介すると、北海道=作況は100を超すだろう。収穫時期も早まり早いところは9月5日から始まり最盛期は9月10日ごろになりそう。ただ、夜温が下がらず高い日が続いておりタンパク値は低くならないだろう。宮城=民間の予想では作況104だが、そうした指数が出るほど順調に生育している。ただ、これまでになかったような高温が続いており、これがどう影響するのか心配している。過去に乳白の多い年もあった。秋田=秋田市内の水害は秋田市が低地であったことも影響した。五城目は2年連続の水害。稲の被害は水害よりも異常に高い気温の影響を心配している。37℃とか38℃という気温はこれまで考えられなかった。稲もバテ気味。新潟・北陸以外の主産地でも異常とも思える高温が続いており、この影響がどのように出て来るのか収穫してみないとわからないというのが実情。

高温障害が頻発している埼玉県では、乳白で3等に格付けされたものは1等に比べ1300円格下で取引されているが、それ以上のものは規格外になり、その価格は決まっていない。この品位格差が妥当なのかどうかは検証されたことがない。被害粒の度合いによって価格が違ってくるのは当然だが、その格付けをどうするのか決める機関があっても良いのではないか。

取引所の重要な役割としてコメの産地銘柄や品位の格付けがある。現物取引所であろうと先物市場の取引所であろうと必ず「格付け委員会」が設置されそこで格付けがなされる。これは先物取引市場では、標準品取引が原則であり、標準品以外のものが納会で受け渡しされた際に格付けされていないと困るからである。

こうした格付けがなされることによって幅広い産地銘柄の取引が可能な取引所になる。品位について言えば、これまで高温障害で乳白米になったものやカメムシで着色粒になったものはサンプルを見て目視で価格を決めていたが、現在では乳白粒・着色粒など被害粒を正確に計測できる穀粒判別器が出来ており、それで計測すれば精米にした際の歩留まり減少等のコストが合理的に算出できる。

こうした機器を活用して格付けを正確に行い、売り手買い手に合理的な判断基準を示してコメの取引を円滑に進めるという意味でも取引所は必要不可欠である。

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