シンとんぼ(58)食の安全とは(16)2023年9月2日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。
前回から、「毒性の強弱を示す根拠」について検証している。ただ、「絶対的な安全」を証明するのはとても難しい。どこまで行っても並行線で「毒性を有る無しで判断する人」を納得させるものは出てこないだろう。とはいえ、現在の安全の証明がどのようになされているのかを検証してみようと思う。
まず、無毒性量(no observed adverse effect level:NOAEL)を求めるために扱われるために使用されるデータについて掘り下げてみよう。
まずは、急性毒性試験だ。これは、薬剤が短時間に体内に多量に取り込まれた時の重篤な健康影響=致死作用を調べるもので、経口、皮膚吸収、呼吸という3つの方法で体内に取り込ませる。
経口から取り込ませるのを経口毒性、皮膚から吸収させるのを経皮毒性、呼気に含ませて呼吸時に取り込ませる吸入毒性といい、半数致死量(LD50)または半数致死濃度(LC50)という数値を使って、毒性を計る。つまり、LD50であれば、これだけの量を一度に摂取すれば半数が死にますよという量を示す。その単位は、mg/kgで表され、体重1kgあたりの物質の量を示す。
例えば、経口のLD50が3mg/kgの物質Aがあったとすると、体重1kgの生物10体にそれぞれ、口から一度に3mgの物質Aを摂取させると、10体のうち5体が死亡することを示す。同様に経皮毒性や吸入毒性を調べて、それぞれのLD50なりLC50なりを実験で導きだす。もちろん実験に使用される生物には個体差があるので、1回の試験では終わらず、複数回実施して結果の精度をあげるように試験される。
このLD50・LC50の値が小さいほど、より少ない量で半数の個体を死に至らせるので毒性が強いと判断される。逆にLD50・LC50の値が大きいほど、毒性が弱いと判断される。
この強弱は理解するのに、身近な物質として塩を例に考えてみよう。塩はご存知のように人間の生命維持に不可欠な物質であるが、その塩のLD50は3000mg/kgである。これは、体重50kgの人であれば、3000mg×50kg=150gを一度に摂取すれば半数の人が死ぬ量だ。これは、健康を維持するために必要な塩の量は10g/人といわれていることからすると、その15倍の量にあたる。
要は少量であれば人間の体の維持のために役立つ(必要)であるが、大量に摂取すると塩であっても命の危険があるということだ。つまり、益になるのも、害になるのも摂取する量次第ということだ。
その辺の安全と危険の境界線の話は、その他の毒性試験の内容を検証した後に考えてみようと思う。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日