モンテパガーノ「小さな村の大きなワイン祭り」ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2023年9月16日
モンテパガーノの全景
モンテパガーノはローマから200キロほど東、アドリア海岸の町ロセートの一地区、海から6キロほど離れた標高300メートの丘の上の村です。
今でこそロセートの1地区ですが歴史は古く、アドリア海にトルコの海軍が跋扈した中世に近隣の住民が安全な丘の上に居住地と海上を監視する砦を作り、地域の政治の中心でもありました。
その後イタリアの近代化が進んだ1927年の町村合併で、ロセート市に組み込まれて寂れ、現在の人口は800人ほどです。
しかしそれが幸いして、お城をはじめ中世の街並みがそのまま残されています。
そのモンテパガーノで8月4、5、6の3日間、第51回ワイン祭りが開かれました。
ワインを楽しむ人たち
この小さな村のワイン祭りは1967年にヴェローナで始められた世界的に有名なワインフェア『VINITALY』に対抗して「モンテパガーノでそれ以上のワインフェアをやろう」と州内のワインメーカーに呼び掛け1972年に始めたもの。もう50年も続いていますが、最近はマンネリ化していたために半世紀を機会に新しい企画で盛り上げることになりました。
村の中心の広場でワインテイストのチケットを買い、村の中の26のワイナリーの試飲所でソムリエやオーナーの説明を聞きながらワインを味わいます。広場には州のエノテカも設置され、州内の100種以上のワインが置かれています。
出店しているのは昔からの古いワイナリー。中でもCantino Mazzarosa Devincenzi は19世紀半ばから続いています。
創始者のGiuseppe Devincenziは1814年生まれ。ナポリ王国、イタリア統一後はイタリア王国の国会議員を務め、引退後にワイン造り、土地のワイン造りの発展に力を尽くしました。
そして19世紀半ばから続く家族経営の、アブルッツォ州で一番古い醸造所の一つ。現在も当時の施設を維持、地域の歴史、文化の伝統を守っています。
オーナーやソムリエの説明を受けながらワインを楽しむ
そして新企画として、広場の一角に作られた舞台で「ワイン作りの革新」、「ワインツーリズム」のパネルディスカッション、「ワイン造りの革新」に参加したメーカーの中に、趣向を変えて海中や地中でワイを熟成する実験を行っている人がいました。
ワインのコルクの栓の部分にゴムのカバーをかけて、水深25メートルから30メートルの海中に12月から5月まで沈めて置くのだそうです。そして貝殻などが付いたままで販売する。また地中での熟成は温度の調整をしなくて済むので経済的とのこと。しかし私には奇をてらった販売促進のように思えました。
「ワインツーリズム」ではベンデミア(ブドウの収穫)や葡萄酒づくりの体験ツアーを行っているワイナリーが紹介されました。古い農園の建物をリフォームしたホテルに泊まり、昔ながらのベンデミアの体験は人気があるそうです。
そしてエノテカではワインコンテスト、ソムリエやワインの専門家、ジャーナリストなどが31種の土地のワインを審査、私も審査員として参加。色、香り、味、それぞれに10点満点の点をつけるのですが、酒好きの私にはみな美味しくてすべてに良い点をつけてしまいました。
「守護聖者の日」に広場のチケット売り場の前を行進する村の人たち
30日の日曜日は村の守護聖者の日。
司祭を先頭に中世の衣装を着た村の人たちがキリストの像を中心に村内を行進します。日本のお神輿に比べ宗教的で厳かな感じです。
主催者はみなが安心してワインを味わえるようにと、海岸のリゾート地、ロセートまでシャトルバスを運行。小さな村の3日間のワイン祭りに1万人以上の人が押し寄せてワインを楽しみました。
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